2019 Fiscal Year Annual Research Report
ニッチ細胞のmTORC1シグナルを標的とした造血器腫瘍治療法開発のための基礎研究
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18J22107
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
深澤 和也 金沢大学, 医薬保健学総合研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 急性骨髄性白血病 (AML) / 骨芽細胞 / mTORC1 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨形成を担う骨芽細胞は骨恒常性維持に必須である。また骨芽細胞はニッチ細胞として造血幹細胞や血液細胞の機能調節にも関与することが知られているが、その分子機構についは明確になっていない。Mechanistic target of rapamycin (mTOR)は、セリン/スレオニンキナーゼであり、哺乳類では mTORC1 と mTORC2の2 種類の独立したシグナル複合体を形成する。Tuberous sclerosis 1 (TSC1)/TSC2 は、mTORC1 抑制因子である。mTORは細胞外からの栄養因子に応答し、様々な細胞機能を制御することから、ニッチ機能をも発揮する可能性を秘めていることが予想される。 本年度は、Col1a1-Cre;Tsc1fl/flマウスにおいて、AMLの進行がどのようなメカニズムで制御されているのかを明らかにするために、ニッチ細胞のmTORC1下流で変動する因子を探索した。 Col1a1-Cre;Tsc1fl/flマウスから骨芽細胞を単離し、qPCR法により、AML促進因子の網羅的な探索を行った。その結果、IL-6のmRNAレベルが野生型マウスと比較し、有意に増加していることが観察された。IL-6シグナルはIL-6受容体下流に存在するStat3のリン酸化を促進することが知られている。そこで、ウエスタンブロッティング法により、AML幹細胞におけるリン酸化Stat3の発現レベルを定量化したところ、有意な増加が認められた。さらに、IL-6受容体ノックダウンAML細胞をCol1a1-Cre;Tsc1fl/flマウスに移植したところ、Col1a1-Cre;Tsc1fl/flマウスで認められた生存期間の短縮は顕著に抑制されることが明らかとなった。以上の結果より、骨芽細胞のmTORC1はIL-6シグナルを介して、AML幹細胞の機能を制御していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はAML進行時における、骨芽細胞のmTORC1シグナルの重要性およびそのメカニズムをin vivoで明らかにすることができたため、「進展」と認められる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は「骨芽細胞のmTORC1が活性化したマウス (Col1a1-Cre;Raptorfl/flマウス)」やラパマイシン投与AMLモデルマウスを用いることで、「ニッチ細胞のmTORC1阻害」が新規AML治療戦略として応用可能であるかどうかを検討する。
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