2018 Fiscal Year Annual Research Report
Research of damage and adaptation process of family and community in nuclear disaster area
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18J22255
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
横山 智樹 首都大学東京, 人文科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 原発事故 / 復興政策 / 復興過程 / 原発避難 / 通い / 帰還 / 若者世代 |
Outline of Annual Research Achievements |
①復興過程,復興政策がいかなるプロセスで進められているのか,とくにこの過程における権力関係や格差などを,国-県-自治体-村落・町内のアクターに着目しながら明らかにすること,②原発事故前後において村落や町内など地域社会が,いかなる再生あるいは再編成の過程にあるのか,とくにこの過程において居住する家族や個々人の生活過程がいかに関連しているのかを明らかにすること,③原発事故前後において家族が,原発避難・原発被害・復興政策過程の中でいかに適応を試みているのか,とくに家族集団と,後継ぎや将来の担い手となる若者世代との関連で明らかにすること,の3点を目的として,今年度は②③を重点的に計8回の調査を行った.調査は聞き取り調査と参与観察を方法として採用し,聞き取り調査は15名に対し1~2回の調査を行った.参与観察としてはまず,地域の伝統祭礼文化である「相馬野馬追祭」への人びとの関わり方を明らかにするために,1つの家が祭りに参加するのを手伝う形で参与観察を行った.また若者世代の友人グループにおいては「相馬野馬追祭」へのかかわりや,結婚・出産といった家族形成,大学卒業後の進路選択といったライフコース上の出来事に密着し,被災した若者世代が地元の原発被災地域とのかかわりの中で生きようとすることの意味を共に模索し続けた.なお聞き取り調査は,参与観察によって得られた情報に基づきつつ補足的に行うというプロセスで行った.他にも,上記調査結果の分析,災害と自治やガバナンスに関する理論的検討,地域社会学会等での研究発表を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査については,「原発避難からの帰還」「若者世代による地域生活の再構築」「圃場整備事業の展開と地区の対応」「復興過程における祭礼行事再開の意味」「復興事業の展開下における自営業の経営戦略」など修士論文で得られたデータを掘り下げる形で計8回の調査を進めることができた.理論的検討としては,3.11後の先行研究やM.フーコーなど理論家の貢献にもとづき,原発災害と復興を統治やガバナンスの視点から分析するための検討を行った.研究発表としては3回の学会・研究会報告,1本の報告書執筆ができ,これを発展させる形で投稿論文の検討も行ってきた.
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Strategy for Future Research Activity |
調査と研究発表においては研究の進展が見られたが,調査結果の分析と投稿論文の執筆という点においては多くの課題が残された.分析については,多くのデータを収集できた反面,理論的視点にもとづく分析や意味づけ,考察などはまだ十分に行えていない.得られたデータは【現在までの進捗状況】で述べたもの以外にも,「復興政策,特に早期帰還政策の展開・変化」「相馬藩以後の相馬地域の歴史的変遷」などが挙げられるが,今後は理論的検討と並行してデータの分析を進め,投稿論文の執筆へとつなげていきたい.2019年度では被災した若者世代への調査と復興政策の分析について重点的に行う予定である.また,「原発避難からの帰還」について投稿論文の執筆を検討してきたが,今年度内での投稿は実現することができなかった.そのため,研究会,学会等で助言いただいている先生方や指導教員と相談しつつ,早期に業績としてまとめられるようにしたい.
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Research Products
(3 results)