2018 Fiscal Year Annual Research Report
ジェントルキツネザルのタケ食適応過程における味覚受容体進化機構の解明
Project/Area Number |
18J22288
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
糸井川 壮大 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 霊長類 / キツネザル / 味覚受容体 / 苦味 / マダガスカル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、分子と行動の手法を組み合わせて「ジェントルキツネザルのタケ食適応過程における味覚受容体の進化機構の解明」を目的とするものである。具体的には、(1)味覚受容体遺伝子の配列の多様性解析、(2)細胞を用いた受容体の機能解析、(3)生態調査と行動研究を主要なアプローチとしている。本年度は(3)の生態調査と分子実験に用いるDNAの採材、(1)の配列解析を実施した。詳細は以下の通りである。 (1)【アンカラファンツィカ国立公園およびアンダシベ地区におけるキツネザルの観察と試料採集】 11月2日から12月23日の約50日間、マダガスカル島北西部のアンカラファンツィカ国立公園と東部のアンダシベ周辺に滞在し、ジェントルキツネザルを含む野生キツネザルの採食行動の観察と採食植物に関する情報収集、分子実験用のDNA源となる糞便の採材を実施した。今年度の渡航では、7種のキツネザルから糞便の採材に成功した。 (2)【キツネザルの苦味受容体遺伝子の配列比較と予備的機能解析】 マダガスカルで採材したキツネザル類の糞便からDNAを抽出し、代表的な苦味受容体遺伝子の配列の比較解析を実施した。2018年に新規に公開されたジェントルキツネザルゲノムと今回の生態調査で採材した種の配列を比較することでジェントルキツネザル特異的な塩基置換やアミノ酸置換を同定した。また、培養細胞を用いて当該苦味受容体の機能解析を実施したところ、ジェントルキツネザルの苦味受容体は他種とは異なる応答性を示すことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初の予定通りマダガスカルへ渡航し、ジェントルキツネザルをはじめとしたさまざまなキツネザルの遺伝試料の採材に成功した。また、一部ではあるが苦味受容体遺伝子の配列比較や機能解析も実施できており、概ね順調に進展している。 それに加えて、ジェントルキツネザル以外の葉食性のキツネザルの遺伝試料も豊富に収集でき、キツネザル下目全体での味覚の進化を議論する下地が整ったため、研究の広がりを生み出す契機となった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、(3)生態調査を軸に、(1)配列比較、(2)機能解析も進展させることができた。次年度はこれらの結果についてより動物の生態に沿った議論を進めていくために、採食植物の採集と成分分析、植物の抽出物を用いた味覚受容体の機能解析を進める。また苦味受容体の研究と並行して、甘味受容体についても配列決定と機能解析を実施する。
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