2019 Fiscal Year Annual Research Report
新奇分子トポロジーを活用した有機半導体材料の創製と有機トランジスタへの展開
Project/Area Number |
18J22297
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
森 達哉 九州大学, 大学院工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 有機トランジスタ / ヘテロアセン / 分子間相互作用 / 溶液プロセス / 高周期カルコゲン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、アーチ形パイ共役骨格に基づいた高性能有機半導体の創出を目的とする。従来の代表的な有機トランジスタ分子はパイ共役骨格およびアルキル鎖が疑一次元的に伸長しており、棒状骨格をモチーフとしているものが殆どである。一方でこれまでの研究で我々は従来とは一線を画すU字型骨格をモチーフとした分子が高い電荷輸送特性を示すことを明らかにした。本知見に基づいて、U字型分子骨格中の硫黄に変えて高周期カルコゲン元素(セレンおよびテルル)を導入することで、分子間相互作用の増大および電荷輸送特性の向上を目指した。 今年度は、前年度にすでに合成や基礎物性評価を終えている高周期カルコゲンを含むU字型分子の溶液プロセスによる薄膜作製と有機トランジスタ特性評価を行った。U字型分子は非対称性に基づいて優れた溶解性を示し、簡便かつ低コストな溶液プロセス(ディップコート法)により容易に結晶性薄膜を形成した。X線を用いた構造解析により、薄膜中で単結晶と同様の分子パッキング構造を形成し、且つ高い結晶性を有していることが分かった。この薄膜を活性層として用いたトランジスタにおいて1 cm2V-1s-1を超える高いホール移動度を熱アニーリングなどの後処理なしで達成した。さらに分子配列の異方性を反映するような電荷輸送の傾向が見られた。この結果は簡便な溶液プロセスで容易に分子配列を制御できることを示唆しており、実用性の観点からも本分子群の有用性が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高周期カルコゲンを含むU字型分子について、溶液から基板を引き揚げて製膜するディップコート法を用いて広範囲に結晶性薄膜を形成することに成功した。X線を用いた構造解析により、U字型分子は単結晶中と同様にユニークなパッキング構造を形成していることを確認した。この薄膜を活性層としたトランジスタは溶液プロセスによる薄膜素子としては非常に高いホール移動度を示した。以上の結果より、本研究で用いた分子設計指針の有用性を確立することができ、研究は計画通り順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はU字型分子が二つ連結した構造に相当するO字型大環状分子の開発を行う。アルキル鎖の大きな運動性を制御し、かつ分子全体の対称性を向上させることでさらに高い結晶性固体を形成することを期待した。予備的実験結果により、二つのパイ共役骨格を連結させるリンカーは直鎖アルキルでは十分な溶解性が付与できないことが明らかになっているため、より柔軟な骨格に変更することを検討している。具体的には酸素原子が部分的に導入されたオリゴエチレングリコールなどを候補としている。合成が完了した後はU字型分子との比較を含めて物性・デバイス特性を評価し、新規有機半導体の設計指針の確立を目指す。
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Research Products
(4 results)