2019 Fiscal Year Annual Research Report
血管新生能と組織接着能を有する成長因子フリーハイドロゲルの創製
Project/Area Number |
18J22422
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
水野 陽介 筑波大学, 数理物質科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
|
Keywords | ゼラチン / 血管新生 / 飽和脂肪酸 / VEGF / 成長因子フリー |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、成長因子を用いることなく血管新生を誘導する材料の創製を行った。既存の血管新生材料は、成長因子を生体吸収性材料へ担持した材料が報告されているが、成長因子は生理環境下での安定性に課題がある。一方、グラム陰性菌の細胞壁を構成するリポ多糖(LPS)は、生体環境下において、炎症性および血管新生を誘導し、この性質はLPS中のリピドA部位の構造に起因することが知られている。そこで、このリピドA部位を部分的に模倣することで、免疫活性を調節し、炎症および、それに伴う成長因子の産生を促すことが可能ではないかと考え、飽和脂肪酸であるドデシル基を修飾したC12-ApGltnを合成した。 未修飾ゼラチンを水和させると溶液状となるが、合成したC12-ApGltn水和物は、ドデシル基による物理架橋点が増加し、自己組織化ゲルを形成した。得られたC12-ApGltnゲルをマウス皮下に埋入すると、血流量が増加したことから、血管新生が示唆された。さらに、材料周囲の毛細血管量が増加し血管新生が促進されることが明らかとなった。組織切片の免疫染色において、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)および血管内皮細胞が増加していたことから、ドデシル化タラゼラチンによる血管新生誘導が確認された。血管新生メカニズムを明らかにするため、マクロファージ様細胞のTLR4をあらかじめブロッキングしたところ、ドデシル化タラゼラチンによる成長因子産生が阻害された。従って、ドデシル化タラゼラチンゲルによるマウス皮下での血管新生は、TLR4経由で引き起こされることが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当研究室の先行研究において、成長因子を用いること無く血管新生を誘導する材料は報告されたが、メカニズムが明らかとなっていなかった。本研究では、LPSの分子構造を模倣することで、マクロファージ上のTLR4経由で炎症および成長因子産生を促進させることが可能であり、さらに動物実験においても血管新生誘導が可能であった。従って、成長因子を用いること無く血管新生を誘導する一つの分子設計方策を確立したといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
C12-ApGltnゲルはドデシル基同士の物理架橋からなるゲルであり、生体内における安定性が非常に低いために血管新生効果の持続性が低い。そこで、コアセルベーションによるマイクロ粒子化およびエレクトロスピニングによるファイバーシート化を行った後に熱架橋を行うことで生体内における分解を遅延させ、長期的に安定な血管新生を実現することを目的とする。
|