2018 Fiscal Year Annual Research Report
神経活動依存的なWgシグナルによる局所的なシナプス可塑性の制御
Project/Area Number |
18J22499
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
川村 ひなた 東京工業大学, 生命理工学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | シナプス可塑性 / ショウジョウバエ / wg / エンドサイトーシス / 神経活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまでに、ショウジョウバエの視覚系において、神経活動依存的なエンドサイトーシスによってシナプス可塑性関連タンパクであるWgが視神経細胞内に取り込まれる現象を発見した。しかしながら、その分子機構および生理学的意義はわかっていなかった。これらの解明のため、我々は大きく分けて2つの実験を行なった。
一つ目は分子機構の解明に関する実験である。神経が発火してからWgのエンドサイトーシスが起きるまでにどのような分子が関わっているかはわかっていない。我々は、カルシウムイオン結合ドメインを持つタンパク質に注目した。それらの遺伝子のうち、ショウジョウバエ視覚系で発現していることがわかっている遺伝子に対してRNAiによる発現抑制を行なった。そうしたところ、Wgのエンドサイトーシスに異常をきたす遺伝子が5つ見つかった。我々はこれらの遺伝子に対してさらなる解析を進めていく予定である。
二つ目は、Wgのエンドサイトーシスの生理学的意義の解明である。神経活動依存的なWgのエンドサイトーシスが神経活動依存的なシナプス可塑性に対してどのような意味をもつのかを明らかにするために、シナプス数とWgの蓄積に相関関係があるかどうかを調べた。そうしたところ、Wgの蓄積がある軸索においてはシナプス数が減少していて、Wgの蓄積がない軸索においてはシナプス数は減少していなかった。このことから、Wgのエンドサイトーシスとシナプス可塑性には一細胞レベルで強い相関関係があることがわかった。来年度は、上記スクリーニングで選出された遺伝子のノックアウト個体におけるシナプス可塑性に対する影響を解析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた通り、Wgのエンドサイトーシスの分子機構および生理学的意義の解明に一歩前進した。分子機構の解明に関しては、カルシウムイオン結合ドメインをもつ遺伝子に注目した大規模なスクリーニングも予定通り完了し、Wgのエンドサイトーシスに関わる5つの遺伝子を発見した。生理学的意義の解明に関しては、Wgのエンドサイトーシスとシナプス可塑性に強い相関関係があることを発見した。このことは、シナプス可塑性の新しいモデルを示唆している。Wgのエンドサイトーシスの分子機構および生理学的意義の解明に関して、どちらも順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
カルシウムイオン結合ドメインを持つ遺伝子に対する大規模スクリーニングで選出された遺伝子のノックアウト個体におけるシナプス可塑性に対する影響を解析する予定である。これにより、Wgのエンドサイトーシスがシナプス可塑性に必要かどうかを明らかにすることができる。さらには、これらの遺伝子に対して、細胞特異的にタンパクを可視化できるような系統を作成する。これにより、Wgのエンドサイトーシスの分子機構の解明を目指す。
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Research Products
(4 results)