2019 Fiscal Year Annual Research Report
超大規模行列関数を計算可能にする数値計算アルゴリズムの開発
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18J22501
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
立岡 文理 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 数値解析 / 数値線形代数 / 数値積分 / 行列関数 / 行列累乗根 / 行列対数関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
量子格子色力学・量子情報科学・機械学習といった幅広い科学技術計算に共通して現れる重要な課題の1つに行列関数がある.行列関数とは累乗根や対数関数等の初等関数を行列に拡張したものである.行列関数の計算は行列特有の性質に対する考慮が必要であり,スカラー関数の計算手法を行列向けに書き換えただけでは実用性に欠ける点に難しさがある.本研究の目的は,超大規模行列に対応できる手法である数値積分法の実用化である.より具体的には,行列累乗根および行列対数関数の計算における数値積分法の高速・高精度化に取り組む. 本年度は,数値積分法の高精度化に取り組んだ.当初の予定では,数値積分における積分経路の工夫をによる精度の改善を検討していたが,計算時間が長くなるという難しさがあり,これとは異なる着想に基づいて研究を行った.具体的には,行列累乗根を条件数の小さな2つの行列累乗根の積に分解し,計算に現れる行列の条件数を小さくする前処理を提案した(行列対数関数については2つの行列対数関数の差に分解する).提案した前処理を用いると理論上は条件数を小さくできるが,実際に計算を行う際には算法の工夫が必要であり,現時点では高精度化の実現には至っていない.このため,来年度も引き続いて,前処理に基づく数値積分法の高精度化に取り組む.なお,副作用的であるが,提案した前処理が精度だけでなく数値積分法の計算効率にも影響を与え,行列によっては前処理により数値積分法を高速化できるという知見を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
数値積分法の高精度化は研究計画当初の予想以上に困難があったが,これまでとは異なった着想によって高精度化の糸口を見つけることができた.また,前年度と異なる着想に基づいて新たに高速化手法を提案できた.これらを統合すると当初の計画以上に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に引き続いて,数値積分法の高精度化に取り組む.ここでは,本年度提案した前処理と当初の計画に基づいて2通りの方法での高精度化を目指す.加えて,これまでに提案したアルゴリズムを用いて大規模行列を用いて性能評価を行う.他に,本年度の成果を論文として公表する予定である.
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