2018 Fiscal Year Annual Research Report
第一原理分子動力学法によるカーボンナノチューブ生成初期過程の解明
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18J22727
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福原 智 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | カーボンナノチューブ / 第一原理分子動力学 / 加速分子動力学 / 触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,カーボンナノチューブの生成過程を原子論の立場から明らかにし,新たなカーボンナノチ ューブ合成触媒の設計指針を与えることを目的としている.
平成30年度は,触媒の元素・構造によって炭素源分子の解離反応がどのように異なるかを解析した.触媒による反応様式や活性化エネルギーの差異を原子論の立場より明らかにするため,解析には第一原理分子動力学を用いた.具体的には,カーボンナノチューブの代表的な合成触媒であるFe触媒,Co触媒,FeCo触媒について炭素源分子であるエタノールの解離過程の解析を行った.エタノール中C-O結合の解離反応については,酸素が吸着するサイトの局所的な構造によって解離反応後の安定性が異なること,C-C結合の解離反応においては,反応が2ステップに分類され,それぞれのステップがFeサイト,Coサイトで活性化エネルギーが小さく,全体ではFeサイトとCoサイトが隣接したサイトで反応が起きやすいことを見出した.
また,解析をカーボンナノチューブ生成初期の炭素源分子解離反応から炭素組織形成過程まで拡張すべく,加速分子動力学法を導入し,その有効性を確認した.さらに,従来の加速手法では計算内で起こる反応の数に対して加速される反応数は一定であるという問題があったが,加速手法を並列して実行することにより複数の反応を同時に加速する手法を開発した.この手法により,カーボンナノチューブ生成という複数の炭素原子が含まれる計算システムを効率的に加速することが期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り,カーボンナノチューブの炭素源となる分子の解離反応について触媒原子ごとの差を第一原理分子動力学により明らかにし,国際学会で発表するに至るなど,おおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に実施したカーボンナノチューブの解離反応について触媒原子ごとの差異についての解析を引き続き行い,得られた知見をまとめて論文投稿する予定である.研究実績の概要で述べた,分子動力学の加速手法を活用いて,炭素源分子の解離反応だけでなく,カーボンナノチューブの初期構造形成に至る一連の過程について解析する予定である.
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