2019 Fiscal Year Annual Research Report
マイクログリアの貪食能のcAMPシグナルによる制御と応用
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18J22730
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
安藤 めぐみ 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | マイクログリア / 貪食 / シナプス / 神経活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、研究課題を「マイクログリアによるシナプス貪食を制御するメカニズムの解明」に変更し、検討を行っている。先行研究から、発達期におけるシナプス除去やアルツハイマー病などの神経変性疾患におけるシナプス損失に、マイクログリアによる貪食能の関与が示唆されてきた。このマイクログリアによるシナプス貪食は、シナプス上に蓄積した補体分子C1qをマイクログリアが認識することで生じるとされてきた。昨年度の研究では、マイクログリアによるシナプス貪食を観察するための培養システムを確立し、マイクログリアによるシナプス貪食にはC1qの存在だけではなく神経活動の上昇も必要であることを示した。今年度は、マイクログリアによるシナプス貪食のさらなる詳細な観察と、in vivo実験系における検証を行った。 ①マイクログリアが生きた神経細胞からシナプスを貪食する可能性を示した。 昨年度に構築した実験系を用いて、マイクログリアによるシナプス貪食のライブイメージングを行った。すると、マイクログリアが神経細胞の突起上に存在するシナプスを神経細胞膜ごとつかみ、自身の細胞体へと運ぶ様子を捉えることに成功した。さらに驚くべきことに、シナプス貪食の後も神経細胞の突起構造が残っており、マイクログリアが生きた神経細胞からシナプスのみを貪食可能であることが示唆された。 ②熱性けいれんモデルマウスにおいてマイクログリアが抑制性シナプスを貪食することを発見した。 昨年度に得られた、「マイクログリアによるシナプス貪食にはC1qと神経活動の上昇が必要である」という発見が生体脳にも適用される可能性を、熱性けいれんモデルマウスを用いて検証した。そして、けいれん後にC1q発現の増加と抑制性シナプスの活動増加が生じ、マイクログリアによる抑制性シナプスの貪食が促進されることを発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、独自の培養システムを構築することで、未だ誰も証明できなかった「マイクログリアは神経細胞を殺すことなくシナプスのみを貪食する」という仮説を世界で初めて証明した。この発見は、マイクログリアによるシナプス貪食に関する先行研究とは一線を画すとともに、それらの先行研究を支持する重要なものであると考えられる。 また本研究では、「マイクログリアによるシナプス貪食には、補体の存在と神経活動の増加の両方が必要である」という発見をin vivo実験系においても証明した。この新規概念は当該研究分野に一石を投じるものであり、本研究の成果をもとにマイクログリアによるシナプス貪食について、さらなるメカニズム解明が進むことが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、神経活動と補体がどのように協調してマイクログリアによるシナプス貪食を促進するのか、そのメカニズムの解明に挑む。具体的には、以下の3点について検証する。 ①マイクログリアによるシナプスへの接触が神経活動依存的に増加する。補体がシナプス上に存在しても、マイクログリアがその補体を認識しなければシナプス貪食が生じないはずである。そこで、補体存在下、神経活動を促進した際にマイクログリアによるシナプスへの接触頻度・接触時間が増加するかをライブイメージングにより検証する。 ②神経活動が補体の分布を制御する。補体の免疫染色を行った際、そのシグナルの強弱や面積にばらつきが見られた。ここから、神経活動が補体の凝集や神経細胞における分布を変化させるのではないか、という着想を得た。そこで、免疫染色により神経活動増加と補体の分布との関連を検証する。 ③神経活動と補体がシナプスの形態および動態を制御する。まずマイクログリアにより貪食されるシナプスを詳細に観察し、形態や動態に特徴があるかをライブイメージングにより検証する。そこで変化が見られたパラメータについて、関連する分子の発現量が神経活動の増加や補体の存在により変化する可能性を検証する。
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