2018 Fiscal Year Annual Research Report
金属有機構造体からなる配向性薄膜の細孔修飾による機能性ナノ材料の創出
Project/Area Number |
18J22743
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
生垣 賢 大阪府立大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | Metal-organic frameworks / エピタキシャル成長 / MOF-on-MOF / 配向膜 / プラズモン吸収 / 銀ナノ粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度である本年は、(1)2D構造のMOF配向膜を多層薄膜(MOF-on-MOF)へ拡張する事、(2)多層薄膜へ銀ナノ粒子を添加する事を目標として研究を進めた。
(1) 配向性MOF-on-MOF薄膜の作製: MOF薄膜を多層化し、上下の細孔径の違いや構成する有機リンカーの違いを利用した機能性開拓は過去にも報告されてきたしかし、過去に達成されたMOF薄膜はすべて面内方向(基板に対して平行な向き)への配向性が欠如していたため、多層化したMOF-on-MOF薄膜もまた面内配向性を失っていた。それに対して申請者は、MOF薄膜を形成する足場としてナノベルト状の水酸化物結晶を採用する事で、基板上全ての方位へ結晶軸が揃った配向MOF薄膜が合成可能であることを報告しており、さらに研究を続けた結果、これらのMOF薄膜と格子整合性の高いMOFを2層目として選択する事で配向したMOF-on-MOF薄膜が形成できる事を見出した。 (2)多層薄膜へ銀ナノ粒子を添加: 本課題においては、上層へ形成するMOFとして、機能性を有したCu2(BPYDC: Bipyridine dicarboxylate)2を選択することで薄膜内部へ金属イオンを高効率に吸着させ、その後還元処理によって薄膜へ銀ナノ粒子を添加できることを解明した。作製した基板に対して、断面TEM観察およびマッピング測定と偏光UV-vis測定を用いて解析する事で銀ナノ粒子の薄膜内部での位置と、周囲の異方的な環境に依存した特異なプラズモン吸収を確認するに至った。以上の成果をまとめ、国際誌に投稿・採択。今後は吸着元素や還元条件、3次元系MOFへの拡張などを最適化する事で、多様な金属ナノ材料をMOF細孔に導入できることが予想され、新規性の高い光学アプリケーションの開拓に繋がると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
第1年度である本年は、(1)配向 MOF薄膜の化学的多様性拡張を行う、(2) 配向MOF 薄膜の細孔をテンプレートとしたPEDOT薄膜の合成・評価 を行う計画であった。(1)に関する研究では、アデレード大学(オーストラリア)のChristian. J. Doonan教授やグラーツ工科大学(オーストリア)のPaolo Falcaro教授と共同して研究を遂行し、十分な成果を得たと考えている。(2)に関する研究でも申請者は熱心に合成・測定・解析に取り組み、一定の成果を得ている。特に(1)に関する成果の一部は、これまでの結果と合わせて本年度、Angewandte Chemie International Edition誌に報告た。また、初年度から効率的に研究に取り組んでおり、結果として第2年度の一部の計画を進めるに至っている点を含めると、本年度の研究進捗状況を高く自己評価できる。実績として執筆論文2報(内1報はCover Picture articleに採択)を報告した上、国際会議発表2件、国内会議・研究会発表5件に参加し、学会賞を3件(口頭講演賞1件、ポスター賞2件)受賞した。更にはこれらの業績が大学から高く評価され、学内顕彰を2件受賞した点を加味した結果、上記の評価に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は引き続き配向性MOF薄膜内部での異種材料導入に関する研究を進める方針である。具体的には、MOF-on-MOF系において報告してきた銀ナノ粒子添加の際の還元条件の最適化を予定しており、MOF細孔内部に均一に閉じ込められた銀ナノ粒子の合成を目指す。
加えて、研究計画にも記載したPEDOTの合成、金ナノロッドの合成にも取り組む予定である。研究計画には記載していなかったが、同時進行で配向COF薄膜の合成に関する研究も推進していく計画をしている。
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Research Products
(10 results)