2018 Fiscal Year Annual Research Report
効率的な抗体の細胞内送達に向けたエンドソーム不安定化ペプチド修飾リポソームの開発
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18J22744
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
坂本 健太郎 京都大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 細胞質への高分子送達 / 人工ウイルスキャプシド / デリバリープラットフォーム / 自己会合 |
Outline of Annual Research Achievements |
わたしはこれまでに細胞質に高分子を効率的に送達することのできるペプチドHAadの創出に成功している。HAadと導入したい高分子を混合して細胞培地中に投与するだけで、高分子を細胞質に送達することが可能であることを示し、現在論文執筆中である。しかし、HAadの臨床レベルでの応用を図るためには、HAadとカーゴ(活性分子)を体内で解離することなく共存する形で患部に送達できるような方法論の開発が必要である。私は日本学術振興会特別研究員としての研究課題の一つにこの問題の解決を挙げている。そのために、関連領域の動向調査を行った結果、ウイルスキャプシドを利用することでより簡便かつ効果的に所望の結果が得られるのではないかと考えた。トマトブッシースタントウイルスのキャプシドタンパク質のうち自己会合に関与する24残基からなるペプチドbeta-annulusは、水中で自己会合し「人工ウイルスキャプシド」を形成する(Matsuura, K., Chem. Commun. 2018, 54, 8944.)。形成された人工ウイルスキャプシドにおいて、beta-annulusはそのN末端を内側に、C末端を外側に向ける。このため、N末端側にカーゴ、C末端側にHAadを結合させ、「カーゴを内封した人工ウイルスキャプシド上にHAadを提示させる」デリバリープラットフォームの構築を計画した。 検討の結果、beta-annulusのN末端側にNi-NTAを、C末端側にPEGリンカーを介してHAadのC末端を結合させたペプチドNi-NTA-beta-annulus-PEG12-C[HAad]が、Hisタグ融合EGFPを効率よく細胞質に送達できることが分かった。EGFPを内封した人工ウイルスキャプシドがHAadの活性により細胞質に送達されたのではないかと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度は、開発した細胞内送達ペプチドHAadに関する特許のPCT出願や、論文化に向けた追加実験、またウイルスキャプシドとHAadを用いたタンパク質の細胞質への導入プラットフォームの創出に取り組んだ。HAadの応用例としてCas9/sgRNA複合体の細胞質への導入による内在遺伝子のノックアウトを実現できた。さらに筑波大学杉山教授との共同研究により、HAadがin vivo (脳室内) でも活性を発揮できることを示すことに成功した。さらに、人工ウイルスキャプシドを形成することができるペプチドであるbeta-annulusとHAadを組み合わせることで、モデルタンパク質(Hisタグが付加されたEGFP)を細胞質に送達できることが示された。今後の研究の進展により、細胞レベルのみならず動物レベルでのタンパク質の細胞質への送達効率の評価が可能になることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はbeta-annulus-PEG12-C[HAad]そのものの細胞内局在や、真にEGFPを内封できているのかの検討などを進め、最終的にはマウスを用いた体内動態の評価、さらにはin vivoでのカーゴの細胞質へのデリバリーまで行いたい。
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Research Products
(5 results)