2018 Fiscal Year Annual Research Report
日本民間薬を中心とした含窒素、含硫黄成分を基盤とする抗 HSV 薬の開発研究
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18J22755
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
笠 香織 京都薬科大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 抗単純ヘルペスウイルス薬 / 日本民間薬 / 含窒素、含硫黄化合物 / 構造活性相関 / アブラナ科植物 / 板藍根 / キンモクセイ / トリテルペン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本民間薬を中心とした天然物を素材として成分探索およびその誘導体合成を行い、得られた化合物の活性を評価して新たな作用機序を持つ抗単純ヘルペスウイルス(HSV)薬候補物質を探索することである。HSV は日本人の約 6 割が感染しているといわれており、脳炎、口唇ヘルペス等の多様な疾患を引き起こす。しかしながら、現在用いられている抗 HSV 薬のほとんどはウイルス DNA の複製を阻害するものである。一方、天然物は多種多様な構造を有しており、従来と異なった作用機序での抗 HSV 活性を持つことが期待される。 今回、含窒素、含硫黄化合物を豊富に含むことが知られているアブラナ科植物に着目した。素材として、古くから板藍根 (バンランコン) として熱病に対する効果を期待して用いられ、近年ではインフルエンザや SARS (重症急性呼吸器症候群) などウイルス性疾患に対して使用されているアブラナ科植物ホソバタイセイを用いた。ホソバタイセイ乾燥根部の成分探索を行った結果、数種の含窒素、含硫黄化合物を単離することができた。また、アブラナ科植物カラシナおよびモクセイ科植物キンモクセイの含有成分の探索を進め、数十種の含硫黄化合物を含めた成分を単離した。 また、それらの成分の誘導体合成を進め、数十種の化合物を得た。得られた単離化合物およびその誘導体、約 100 化合物について抗 HSV-1 活性の測定を実施したところ、キンモクセイ含有成分の誘導体に活性を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
含窒素、含硫黄化合物を豊富に含むことが知られているアブラナ科植物の中でも、古くから板藍根 (バンランコン) として熱病に対する効果を期待して用いられてきたホソバタイセイ (Isatis tinctoria) に着目し、成分探索を行った。すなわち、ホソバタイセイ乾燥根部のメタノール抽出エキスを作成し、合成多孔性吸着剤 HP20 に付し、得られたメタノール 50% 溶出部について各種クロマトグラフィーを用いて繰り返し分離精製を行った。その結果、ホソバタイセイ乾燥根部より、neoglucobrassicin (1) や goitrin (2) などの含窒素、含硫黄化合物を単離することができた (単離収率 : 1 0.033%, 2 0.013%)。また、アブラナ科植物オオアラセイトウ (Orychophragmus violaceus)、カラシナ (Brassica juncea) およびモクセイ科植物キンモクセイ (Osmanthus fragrans var. aurantiacus) の含有成分の探索を進め、数十種の含硫黄化合物を含めた成分を単離した。また、それらの成分の誘導体合成を進め、桂皮酸、クマル酸およびカフェ酸とテルペン類との縮合反応を進め 12 種の誘導体を得た。 さらに、単離した化合物 1 を用いて誘導体合成を行い、5 種の新規含窒素化合物を得た。得られた単離化合物およびその誘導体、約 100 化合物について in vitro における Vero 細胞を用いた plaque reduction assay を実施した。その結果、クマル酸誘導体に弱いながらも活性を見出した (Inhibition 18.1% at 25μM)。その他、トリテルペン誘導体や関連トリテルペン化合物に活性を見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
1 年目に引き続き、日本民間薬を中心とした含窒素、含硫黄化合物をもつ植物、特にアブラナ科植物に着目して成分探索を行う。すなわち、植物の抽出エキスを作成し、各種クロマトグラフィーを用いて繰り返し分離精製を行い、構造を決定する。さらに、単離した成分を用いて誘導体を合成する。得られた単離化合物および誘導体について、in vitro における抗 HSV-1 活性試験、すなわち Vero 細胞を用いた plaque reduction assay を行う。1 年目に得られた活性成分に関しては、関連化合物を合成し、Vero 細胞を用いた plaque reduction assay を実施し構造と活性の相関について検討を行う。一方、細胞毒性についても検討を行うことで、化合物の有効性および副作用の両面から化合物の実用性について評価する。さらに、特に活性の強い化合物についてはマウスを用いた in vivo 試験を実施する。 加えて、アブラナ科植物以外にも、伝承薬効として抗ウイルス様作用があるとされるタバコウロコタケ科カバノアナタケ (Inonotus obliquous) やタデ科植物アイ (Persicaria tinctoria) について成分探索を行い、含有成分および関連化合物について Vero 細胞を用いた plaque reduction assay を実施し、抗 HSV-1 活性成分として有用な素材の確保に努める。
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Research Products
(3 results)