2018 Fiscal Year Annual Research Report
自閉症モデルマウスにおける海馬鋭波の観察とその操作による自閉症様症状の改善
Project/Area Number |
18J22789
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高 夢セン 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
|
Keywords | Sharp wave-ripple / 海馬 / Poly(I:C) |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「自閉スペクトラム症(ASD)では海馬鋭波(SWR)が異常であるために、興奮-抑制バランス(E/Iバランス)を適切に調節することができない」という仮説を検証することを目的としている。本年度は、ASDモデルマウスとしてpoly(I:C)マウスを用いて、in vitroにおいて局所場電位を記録し、SWRの変化を調べた。 研究対象であるpoly(I:C)マウスは、妊娠マウスへpoly(Inosine:Cytosine) (poly(I:C))を投与し、免疫反応を引き起こすことで、その仔マウスにASD様症状を誘導するものである。Poly(I:C)群と対照群のマウスから海馬急性スライスを作製し、64チャネル電極アレイによりSWRを記録し、海馬CA1野におけるSWRを選んで解析を行った。CA1野は抑制性のインターニューロンが多く存在するため、SWRの鋭波に伴う高頻度のリップル波が明らかに観察できる。解析の結果、poly(I:C)群ではSWRの頻度が高い傾向にあることを確認したが、対照群とは有意差がなかった。 一方で、poly(I:C)群と対照群から記録された全てのSWRに対して、振幅、持続時間、対称の度合い、またリップル波成分の強度をそれぞれ抽出し、4つのパラメータに基づいて、RCC(robust continuous clustering)という手法を用いて7個のクラスターに分けた。分類を行った結果、振幅が大きく、持続時間が長く、またリップル波の強度が高いSWRのクラスターを、poly(I:C)群から記録されたものが大きな比例で占めている。つまり、poly(I:C)群のSWRは頻度が有意に変わらないが、全体的に強くなる傾向を示した。 以上の結果をまとめ、Biological and Pharmaceutical Bulletin誌に投稿して受理された
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SWRの特徴を詳細に解析するために、RCC(robust continuous clustering)というクラスタリングの手法を利用した。これにより、予想通りにSWRの特徴解析を順調に行うことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
海馬において神経細胞の興奮-抑制バランスを測定する以外、海馬と結合関係を持つ皮質の領域に対しても調べてみたい。これは、海馬からの興奮性入力により、皮質の神経細胞も発火しやすい状態になり、さらに脳の広い範囲で興奮性が上がる可能性があるからである。Poly(I:C)マウスにおける脳の興奮-抑制バランスの変化、およびそれを調節する仕組みを海馬や皮質の広い範囲で解明したいと考える。
|
Research Products
(3 results)