2019 Fiscal Year Annual Research Report
マウンテンゴリラの住民参加型保全とエコツーリズムの持続可能性に関する研究
Project/Area Number |
18J22882
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大塚 亮真 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
|
Keywords | 保全生物学 / マウンテンゴリラ / 人と動物の関係 / エコツーリズム / 作物被害 / 住民参加 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、マウンテンゴリラ(以下、ゴリラ)の住民参加型保全とエコツーリズムの持続可能性に関して、人とゴリラ双方の視点から総合的に理解を深め、ゴリラの保全とエコツーリズムの持続的な発展に貢献することである。 1. 昨年度に引き続き、ゴリラによる作物被害の軽減を目的として20年以上継続している住民参加型プログラムの機能と持続要因について考察を深めた。 2. 地域住民や観光客との接触がゴリラのストレスに与える影響を評価するために、データ解析を進めた。現地のカウンターパートと協力しながら、気象データやゴリラの遊動データも追加するなどして、解析を継続している。 3. エコツーリズムは、ゴリラ保全に必要不可欠である一方、病気感染のリスクなど、ゴリラ保全に負の影響を与える側面もある。病気感染のリスク軽減のため、一定の距離を保って観察することがルールとして定められているが、順守されていないという報告もある。現状を改善するためには、ゴリラに近づいて観察したいという人の期待・欲望への深い理解とその適度な抑制が必要である。そこで、エコツーリズムにおける人とゴリラとの近接に着目して、関連するYouTube動画の内容を分析した。その結果、人とゴリラの距離が極めて近い動画が多く、近接距離が近い動画ほど視聴者からより多くの反応を得る傾向があった。このような映像の影響については慎重に議論を重ねる必要があるが、現場に再帰的に影響を及ぼしている可能性は高いだろう。 4. 2019年11月から2020年3月にかけて、ウガンダ共和国ブウィンディ原生国立公園でフィールドワークを実施した。エコツーリズムの参与観察と観光客と国立公園管理者を対象としたインタビュー調査・アンケート調査を実施して、観光客の満足度に影響を与える要因と持続的なエコツーリズムの実施にむけた現場の課題に関するデータを収集した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
採用2年度目である2019年度は、ゴリラの作物被害に対する地域住民の認識と、ゴリラの作物被害軽減を目的とした住民参加型プログラムの機能と持続性の要因について考察を深めた。この研究成果について、投稿論文を執筆し国際誌に投稿した。本論文は現在も査読審査中である。 当初、2019年6月にウガンダ共和国へ渡航する計画を立てていたが、調査地付近でエボラ出血熱の患者が発見されたことにより、急遽渡航をキャンセルせざる得ない状況となった。そこで、これまで収集してきたデータの質的・量的データ分析をおおきく進めることができた。また、日本国内にて、ゴリラのエコツーリズムに関連するYouTube動画の内容分析を実施し、動画内の人とゴリラとの近接が視聴者の反応に与える影響を検証した。この成果は、2019年9月に開催された京都大学霊長類学・ワイルドライフサイエンス・リーディング大学院の第12回国際シンポジウムにて発表し、優秀発表賞を受賞した。また、この成果をまとめて論文を執筆して国際誌に投稿し、受理された。 2019年11月中旬から2020年3月中旬まで、ウガンダ共和国のブウィンディ原生国立公園で実施したフィールドワークでは、エコツーリズムの参与観察、観光客と国立公園管理者への聞き取り調査を実施して、ゴリラのエコツーリズムの持続可能性に関する貴重なデータを収集することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初は、2020年度に短期間のフィールドワークを実施する計画を立てていたが、新型コロナウイルスの影響によってフィールドワークが実施できるかどうか分からない。そこで、2020年度は、基本的には日本国内に留まり、データの分析と論文の執筆・改稿作業に専念する予定である。 ゴリラの作物被害に対する地域住民が複雑な認識とゴリラによる作物被害の軽減を目的とした住民参加型プログラムの機能と持続要因に関する投稿論文の改稿作業を進めて、再投稿する。 ゴリラのストレスに影響を与える要因の解明と地域住民や観光客との接触がゴリラのストレスに与える影響の評価について、データ解析を完了させる。本研究成果をまとめて投稿論文を執筆し、国際誌に投稿する。 観光客の満足度に影響を与える要因と持続的なエコツーリズムを実施するうえでの様々な課題について、2019年度に実施したインタビュー調査とアンケート調査で得られたデータの質的・量的データ分析をおこなう。本研究成果をまとめて、投稿論文を執筆し、観光学または保全科学分野の国際誌に投稿する。 これらの研究成果は日本アフリカ学会や日本霊長類学会にて発表する。また、2018年度・2019年度の研究成果と2020年度の研究成果をまとめて博士論文を執筆し、提出する。
|