2018 Fiscal Year Annual Research Report
成体神経幹細胞の胎生期「起源細胞」の形成機構の解明
Project/Area Number |
18J22995
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山口 詩真 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
|
Keywords | 神経幹細胞 / 神経発生 / 細胞運命制御 / 単一細胞トランスクリプトーム |
Outline of Annual Research Achievements |
胎生期の神経幹細胞は神経管全体に存在するが、成体になると脳の非常に限られた場所にしか存在しなくなる。胎生期の神経幹細胞(神経系前駆細胞)のごく一部の細胞のみが、成体まで残る細胞として選ばれる機構は未だ明らかでない。興味深いことに我々は、胎生期の分裂頻度の高い神経系前駆細の中に、一部分裂頻度の低い細胞が存在し、少なくともその一部が成体神経幹細胞となる事を報告した (Futurachi et al., 2015)。しかし分裂頻度の低い神経系前駆細胞の中には、成体神経幹細胞になる細胞だけではなく、グリア細胞や上衣細胞になる細胞も混在している。分裂頻度の低い神経系前駆細胞は均一な集団で、その後の環境により異なる運命を辿るのか、それとも、そもそも分裂頻度の低い神経系前駆細胞は不均一な集団で、その一部に既に成体神経幹細胞になることが運命付けられた細胞群があるのかは明らかになっていない。もし胎生期の時点で既に成体神経幹細胞になることが運命付けられた細胞群が存在するならば、その細胞群は成体神経幹細胞に似た性質を持つことが予想される。そこで本研究では、単一細胞トランスクリプトーム解析を用いて分裂頻度の低い神経系前駆細胞の不均一性を解析し、成体神経幹細胞の真の胎生期「起源細胞」を同定すること、およびその性質を明らかにすることを目的とした。 当該年度では、10X Genomics Chromiumシステムにより、分裂頻度の低い神経系前駆細胞の単一細胞トランスクリプトーム解析を行った。その結果、分裂頻度の低い神経系前駆細胞には複数のサブタイプが存在し、分裂頻度の低い神経系前駆細胞は不均一であることが示唆された。次年度は、それぞれのサブタイプの性質を詳細に解析する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度では、本研究で最も重要である分裂頻度の低い神経系前駆細胞の単一細胞トランスクリプトーム解析を行った。その結果、分裂頻度の低い神経系前駆細胞の遺伝子発現プロファイルは不均一であることが示唆された。分裂頻度の低い神経系前駆細胞が均一か不均一かという問いの一端を明らかにしつつあり、着実に研究を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、得られた遺伝子プロファイルの情報を用いてGene Ontology解析やパスウェイ解析などを行うことで、分裂頻度の低い神経系前駆細胞のサブタイプの性質を詳細に解析する。また様々な時期の神経系前駆細胞の単一トランスクリプトーム解析を行うことで、分裂頻度の低い神経系前駆細胞の不均一性がいつから生じるのか、発生に伴ってそれぞれのサブタイプがどのように性質を変化させていくのかについても解析を行う。
|