2018 Fiscal Year Annual Research Report
α1-酸性糖蛋白質の糸球体バリア機能と抗炎症性作用を利用した腎疾患治療薬の開発
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18J23070
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
藤村 留衣 熊本大学, 薬学教育部, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | α1-酸性糖タンパク質 / 慢性腎臓病 / 糖尿病性腎症 / 尿タンパク / 抗炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はこれまでの研究成果を基盤とし、透析導入原疾患の第一位である糖尿病性腎症に対してα1-酸性糖タンパク質を利用した治療薬開発を目的としている。以下に、本年度の研究により得られた知見をまとめる。 1.AGP投与後の腎保護作用の検討 ex vivo実験のための免疫細胞の回収を行なったところ、十分量の細胞を確保することが困難であった。そこで、先に腎組織中の免疫細胞の評価としてMACS(Magnetic-activated cell sorting)システムを用いたマクロファージ細胞の分取を試みた。その結果、病態モデル群からの分取には成功したものの、健常マウスからの分取不能であった。この理由として、腎臓において健常時に常在するマクロファージの数が少なく、腎障害時にマクロファージが遊走していることが考えられる。現在は細胞の回収率が高いFACSを用いた解析を検討している。 2.糖尿病性腎症マウスにおける検討 糖尿病性腎症のモデルは未だ確立されておらず、様々な作成メソッドが存在する。そこで、比較的報告の多いストレプトゾトシン(STZ)誘発糖尿病性腎症モデルの作成を試みた。投与量及び投与経路の検討により、STZ投与1週間後から空腹時血糖値の上昇が見られ、13週間後には尿中アルブミンが出現した。しかしながら、モデルにおける個体間のばらつきが大きく、STZ負荷だけでは糖尿病性腎症モデルとしては不十分だと考え、現在はSTZに加えて片側腎臓摘出によって腎臓に負荷がかかりやすい状況下でモデルの作成を試みている
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、α1-酸性糖タンパク質(AGP)の尿タンパク抑制効果に着目し、本邦のヘルスケアにおける緊急かつ最重要課題の一つに位置付けられている糖尿病性腎症への応用を試みている。また、この尿タンパク抑制効果のメカニズムは糸球体バリア機能の強化および抗炎症作用といったユニークな特性によるものであり、既存の降圧による尿タンパク抑制とは全く異なるアプローチとなる。当初の一年目の計画では、尿タンパク抑制効果の詳細な検討として抗炎症作用の一因である『免疫細胞に対する影響評価』を予定していた。しかし、計画していたex vivo実験において十分量の細胞の獲得が困難であり、実験計画の変更を余儀なくされた。一方、「糖尿病性腎症マウスにおける検討」についてはストレプトゾトシン誘発糖尿病性腎症マウス(1型糖尿病モデル)の作成及び評価に着手できており、二年度目に計画していた内容まで踏み込めた点もあることから、全体的な研究進捗状況としては「期待通り研究が進展した」と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
採用の第二年度目においては、第一年度目の結果を受けAGPの作用機序解明として免疫細胞に対する影響評価に加え、糸球体バリアー機能の評価を実施する。また、現在すでに検討中である糖尿病性腎症マウスの作成後、AGPの有用性評価を行う予定である。
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Research Products
(4 results)