2019 Fiscal Year Annual Research Report
α1-酸性糖蛋白質の糸球体バリア機能と抗炎症性作用を利用した腎疾患治療薬の開発
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18J23070
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
藤村 留衣 熊本大学, 薬学教育部, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | α-1酸性糖タンパク質 / 慢性腎臓病 / 糖尿病性腎症 / 尿タンパク / 炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はα1-酸性糖タンパク質(AGP)による糸球体バリアー機能と抗炎症作用のユニークな特性を活用することで、糖尿病性腎症に対する新規治療薬として応用することを最終目標としている。以下に、本年度の研究により得られた知見をまとめる。 AGP投与後の腎保護作用の検討 1)AGP投与後の腎臓中マクロファージの極性変化。ADR腎症マウスおよび健常マウスに対してAGPを外因的に投与し、FACSを用いて腎臓からマクロファージを分取、マクロファージの極性を示す分子のmRNA発現を評価した。結果、ADR腎症モデルでは腎臓中マクロファージにおける抗炎症性マクロファージマーカーCD163の発現が減少し、AGP投与によってCD163の発現が回復する傾向が見られた。更に、健常マウスへのAGP投与は腎臓中マクロファージにおけるCD163発現を有意に上昇させた。よって、AGPが腎臓中のマクロファージに対して極性変化を起こしていることが明らかとなった。2)ADR腎症マウスにおけるAGPの糸球体保護作用。これまでにAGPはADR誘発の糸球体障害および尿タンパクを抑制することを明らかにしている。そこで、AGPによる糸球体ポドサイトへの影響を評価した。ADR腎症マウス及びADR+ AGPマウスにおけるネフリン発現を蛍光免疫染色にて評価した結果、両者ともに健常マウスと比べてネフリン発現が減少していた。よって、AGPは糸球体のポドサイトに影響することなく糸球体障害および尿タンパクを抑制していることが明らかとなった。以上の結果を踏まえて、腎臓の専門誌Kidney360へ論文を投稿した。(2019年11月投稿、2020年3月受理)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の研究実施状況について、当初の予定通りAGP投与後の腎保護作用の追加検討が終わり、論文を投稿することができた。また、AGP KOマウスを用いた検討においても当初の予定通り着手でき、腎糸球体におけるAGPの寄与が示唆されてきている。一方、糖尿病性腎症マウスにおけるAGPの有用性評価については大きく進めることができなかった。これは、前述の追加検討に時間を要したためである。以上より、研究進捗状況は「おおむね順調に進展している」と判断致します。
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Strategy for Future Research Activity |
採用の第三年度目は、二年度目の結果を受け、AGP KOマウスを用いたチャージバリアに対する寄与を検討するとともに最終目標である糖尿病性腎症への応用を目指し、糖尿病性腎症モデルを用いたAGPの有効性を実証する予定である。
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