2019 Fiscal Year Annual Research Report
第1級アルコールからの不均一系触媒的脱水素反応の制御と有機合成法への活用
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18J23126
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Research Institution | Gifu Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
高倉 稜弥 岐阜薬科大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 減圧排気 / 酸素酸化 / 不均一系触媒 / 重水素化 |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究室では、活性炭担持型不均一系遷移金属を触媒とした第一級ならびに第二級アルコールの脱水素型酸化反応を開発している。これらの反応の進行に伴い水素ガスが副生するため、逆(接触還元)反応が反応効率低下の一因となる。私は、真空ポンプなどを使って反応容器内を穏やかな減圧状態に保ち水素を排出する「減圧排気法」や、分子状酸素を反応の進行に伴い生成する水素のスカベンジャーとして使用する「酸素酸化法」の2つのグリーンな制御法を駆使して、新しい有機合成反応の開発を目指している。 ラクトンは天然物や医薬品、化粧品などを構成する部分骨格であり、簡便な合成法の開発は重要である。私は様々なジオール誘導体に適用可能なPt/Cを触媒とした酸素酸化的ラクトン化反応を確立した。このラクトン合成法は毒性が低く、安価な水を溶媒としており、中性条件下で反応が進行するため環境調和型反応として価値がある。昨年度はこれらの研究結果を英文原著学術論文としてまとめ、国際学術誌に受理された。 さらに、新たな研究テーマとしてアルキルエーテルを含む様々な化合物の酸化的官能基変換法の開発にも取り組んだ。第二級ベンジルメチルエーテルをエチレングリコール中酸素雰囲気下、Pd/Cを触媒として加熱撹拌すると、環状ケタール誘導体が高収率で生成することを見出した。またこの反応を、第一級ベンジルメチルエーテルに適用すると、安息香酸2-ヒドロキシエチルが得られることも明らかとした。さらに、上述の酸化反応は、2-フェニルテトラヒドロフランの酸化的芳香化反応にも利用できることが判った。 また、重水素標識研究にも並行して取り組んでいる。昨年、一般財団法人総合科学研究機構(CROSS)の研究インターンシップに参加し、ピリジニウム系イオン液体の重水素標識実験と赤外分光法を用いた重水素化物の劣化分析を担当した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「減圧排気法」や「酸素酸化法」の2つの制御法を駆使した新しい有機合成反応の開発研究では、アルコール類を基質とした様々な官能基への直接官能基変換法の確立を目指している。昨年度は穏和な反応条件下多様なジオールに適用可能な「不均一系遷移金属触媒によるジオール類の酸化的ラクトン化反応」を確立するとともに国際学術誌に投稿・受理されており、研究は計画通りに進行している。 また現在は、この方法論をさらに展開して、アルコール誘導体であるアルキルエーテルを含む誘導体の環境調和型酸化法の開発に挑戦している。その成果の1つとして、この不均一系触媒と分子状酸素を組み合わせた酸化条件下、ベンジルアルキルエーテル類を基質の違いによって環状ケタールやヒドロキシエステルへと選択的に変換できることを見出している。このように単純なアルコールだけでなく、その誘導体の変換法確立も順調に進んでいる。 「不均一系遷移金属触媒によるジオール類の酸化的ラクトン化反応」に関しては、国際学会(The 4th International Symposium on Process Chemistryと 27th International Society of Heterocyclic Chemistry Congress)にて2件の研究成果発表をした。
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Strategy for Future Research Activity |
[ベンジルアルキルエーテル類の酸化的官能基変換反応] 第二級アルコールである1-フェニル-1-ペンタノールから誘導したメチルエーテルを、エチレングリコール中酸素雰囲気下、Pd/Cを触媒として加熱撹拌すると、基質へのエチレングリコールの付加反応に続いて環化が進行し、環状ケタール誘導体が高収率で生成することを見出した。またこの反応を、直鎖状のベンジルメチルエーテルに適用したところ、安息香酸2-ヒドロキシエチルが得られた。基質依存的に進行するこれら2つの酸化的官能基変換反応では、芳香環に様々な電子供与性基が導入された第一級および第二級ベンジルアルキルエーテル類を基質とすることができる。ラジカル捕捉剤などを用いた反応メカニズムの検討に加え、様々な第一級および第二級ベンジルアルキルエーテルへの基質適用範囲の拡充の後、学術論文として投稿する予定である。 [Pd/Cを触媒とした複素環式化合物の酸化的芳香化反応] 活性炭担持型不均一系触媒と分子状酸素を組み合わせた酸化反応条件下、2-フェニルテトラヒドロフランは芳香化して2-フェニルフランに変換される。この反応は、エーテル系溶媒中Pd/C存在下効率良く進行するが、水素化分解されたベンゼンブタノールが副生することも判っている。これは、酸化的芳香化反応の進行に伴い生成する水素が原因である。従って、副生水素に起因する接触還元の抑制を目的として、水素を減圧排気しながら反応して収率向上を目指す。これと併行して水素アクセプター(ニトロ基やカルボニル基、オレフィンなどを含む化合物)の添加による反応制御も検討する。リボース誘導体などの糖から容易に合成される飽和複素環式化合物を出発物質とした多置換芳香族複素環の簡便合成法へと展開する。
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Research Products
(4 results)