2018 Fiscal Year Annual Research Report
灌流可能な管腔ネットワークを有するon chip立体組織デバイスの構築
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18J23131
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西村 啓吾 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | アルギン酸 / ゲルファイバ / 血管 / 灌流 / 流路 / スフェロイド / 三次元組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、立体組織内に灌流可能な管腔ネットワークを形成する手法の確立に向け、下記の二つの小テーマに取り組んだ。 1. 管腔構築のための犠牲層として利用可能なネットワーク状アルギン酸ゲルの形成:アルギン酸ゲルの加工法として、複数の射出口を有するデバイスを用いた射出成形を発想した。まずシータ管という二つの射出口を有するガラス管を用いて、射出流量を制御することにより、分岐状や鎖状などの複雑な形状のファイバを作製することに成功した。この結果を基に、細胞接着活性配列であるRGDモチーフを修飾したアルギン酸ゲルを用いて分岐状ファイバを作製し、表面に血管内皮細胞を播種してコラーゲンゲル内で犠牲テンプレートとして用いることで、内壁に血管内皮細胞を有した送液可能な分岐状の流路を作製した。さらに、ソフトリソグラフィにより作製した多数の射出口を有する微小デバイスを用いることで、多分岐形状を有するファイバの作製に成功した。 2. 血管内皮細胞を用いたスフェロイド内部への灌流可能な血管の導入:アルギン酸ゲルのテンプレートにより構築したネットワーク状血管様流路と、立体組織を構成する細胞との種々の相互作用を実現するためには、組織内部における血管新生などの血管内皮細胞のリモデリングが必要となると考えた。そこで、まずは組織モデルとして主に線維芽細胞からなるスフェロイドを用いて、血管新生のアッセイが可能なデバイスの構築を目指した。二つの微小流路からなるデバイスを作製し、一方の流路には細胞外基質の成分を有するゲル中にスフェロイドをアレイ化し、その流路とスリットを介して接しているもう一方の流路には、血管内皮細胞を播種した。これにより、高効率な血管新生アッセイが可能なデバイスを構築した。 上述の通り、灌流可能な管腔ネットワークを有するon chip立体組織デバイスの構築に向けて、必要な要素技術の開発がそれぞれ進展した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、管腔構築のための犠牲層として利用可能なネットワーク状アルギン酸ゲルの形成および血管内皮細胞を用いたスフェロイド内部への灌流可能な血管の導入という、二つの要素技術に関する研究がそれぞれ進展した。結果として、これらの成果を統合することで、来年度以降、灌流可能な管腔ネットワークの構築とその血管としての機能評価へと研究を進展させるための基礎が築かれ、初年度の進捗としてはおおむね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、多分岐形状を有するアルギン酸ゲルファイバを犠牲テンプレートとして用いることで、ネットワーク状の血管様流路を構築し、さらにバリア機能といった血管としての機能の評価を進めていく。また、デバイスの微小流路とスフェロイド内部を血管新生により接続し、デバイス外部のポンプなどを介してスフェロイド内部への培養液の送液が可能なシステムの構築を目指す。
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