2018 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロデバイスを用いた単一酵素活性検出による病態診断法の開発
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18J23224
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
坂本 眞伍 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 1分子計測 / 疾患診断 / アルカリホスファターゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、これまでに確立した、マイクロデバイスにおけるALP活性測定手法を発展させ、生体サンプルを用いた疾患診断を可能とする測定プラットフォームの構築を目指した。具体的には、赤色の波長域(600 nm前後)に蛍光波長をもつマイクロデバイス適合性蛍光母核と、蛍光母核とリン酸部位との間にリンカーとして4-hydroxybenzyl alcoholを持つプローブを新たに合成した。その結果、計7種類からなるマイクロデバイス適合性ALP活性検出蛍光プローブ群の開発に成功した。そのうち適切な組み合わせを選択することで、ヒト血清中サンプル中に存在する小腸型ALPと組織非特異型ALPをその1分子毎の活性パターンに基づき、分離能高く判別することに成功した。さらに本測定手法を糖尿病患者5名、健常者5名分のサンプルに対して適用し、その結果分離検出されたサンプル中のALPIの分子数は、従来の吸光法を用いた測定によって得られたALPIの活性値と高い相関を示した。すなわち、本手法は生体サンプル中のALPアイソザイムを高い精度で分離検出し、定量することが可能であることが示された。 また、開発したプローブ群のうち、上記とは異なる組み合わせを用いることで、血清サンプル中のprotein tyrosine phosphatase (PTP)を検出することにも成功している。PTPが血清中に存在するという報告は過去になく、本測定手法の高い分離能、検出感度によって初めて検出が可能となった例であると言える。すなわち本測定プラットフォームの高い分離能、検出感度は、今後新たな疾患バイオマーカーを見出し、それに基づく疾患の早期・高精度な診断を十分に可能とする水準に達していると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画であった、生体サンプル中のアルカリホスファターゼのアイソザイムを分離検出するという目標を達成したのみならず、これまで報告のなかった、血清中のprotein tyrosine phosphataseの検出も達成したため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこれまで確立した、生体サンプル中の酵素活性を1分子単位で分離検出する技術をアルカリホスファターゼ以外の酵素群へと応用し、実際の疾患診断への適用や新規バイオマーカーの発見を目指す。具体的にはアミノペプチダーゼ(AP)をターゲットとし、APによって代謝され蛍光を発するプローブを申請者の開発した蛍光色素を母核として合成し、マイクロデバイス上で可視化できるか否かを検証する。酵素はそのアミノ酸配列によって水溶性・親和性にも様々なバリエーションがあるため、酵素自体がマイクロデバイスに吸着したり、ウェル外に漏出したりすることによって活性が可視化できない可能性もある。その場合、共同研究を予定している野地博行研究室と共同で、現在は適用されていない酵素においても適用可能な素材のマイクロデバイスの開発を進め、まず当面は1種類のAP活性をマイクロデバイス上で可視化することを達成する。
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Research Products
(10 results)