2019 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロデバイスを用いた単一酵素活性検出による病態診断法の開発
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18J23224
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
坂本 眞伍 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 1分子計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度に確立した、生体サンプル中酵素の1分子毎の活性パターンに基づく分離検出法を応用し、疾患の早期診断に繋がる新規バイオマーカーの探索に取り組んだ。具体的には、生体サンプル中のEctonucleotide pyrophosphatase /phosphodiesterase (ENPPs)の活性検出を試みた。これらのうち、最適な組み合わせ(sTG-mdTMP, sTM-dCMP)を用いることで、血液中において複数種類の活性パターンを有するクラスターを検出することができた。また、これらのENPP活性はプレートリーダー等を用いた通常の測定では検出することが出来なかった。そこで、健常者14名、膵臓がん患者31名の血漿サンプルについて酵素活性検出を行い、収集したデータについて統計的に多変量解析を行った結果、ENPP活性を持つ複数のクラスターの1つについて、膵臓がん患者における分子数の有意な増加が見出された。精製酵素を用いた活性プロファイル取得に基づき、このクラスターはENPPのサブタイプの1つであるENPP3であることが推定された。ENPP3は好塩基球の活性化マーカーとして知られており、膵臓がんの進行による炎症作用の結果、血中への逸脱量が増加したと考えられる。実際に膵臓がん患者のステージ毎に診断の有用性を示すROC曲線を作成したところ、ステージの進行毎にその有用性の指標であるAUC値が向上し、この仮説を支持する結果となっている。このような成果から、本測定技術は生体サンプル中の微量な酵素活性を検出し、疾患の早期診断バイオマーカーとしての利用を可能とし得る技術であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定であった生体サンプル中の酵素活性を1分子単位で分離検出する技術をアルカリホスファターゼ以外の酵素群への応用のみならず、疾患関連バイオマーカー候補分子の発見にも至ったという結果を踏まえて。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は酵素活性検出プローブを網羅的に合成し、開発したプローブライブラリを用いて実用に耐える精度を有する診断バイオマーカーの発見に着手する。
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