2019 Fiscal Year Annual Research Report
土壌窒素環境および根系内の空間的位置の違いによる細根機能の変動性の解明
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18J23364
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
土居 龍成 名古屋大学, 環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 細根 / ヒノキ / 次数分類 / 種内変動 / 幹からの距離 / 分岐強度 / 土壌酸緩衝能 |
Outline of Annual Research Achievements |
樹木細根は土壌中の養水分を吸収し輸送する機能がある。環境変動に敏感な器官であるため土壌の物理的化学的な変動に応答して細根形態は変動する。分岐位置を考慮した次数分類を用いることで細根の機能特性を反映し、形態と土壌特性の関係性を明らかにできる。本研究の目的の1つである幹からの水平距離に応じた細根系の次数形態特性の変動性を明らかにするために、本年度は東海地方の異なる土壌窒素環境に生育するヒノキ2林分にて幹から1, 2, 3 m地点で根端(1次根)から直径2 mmに至るまでの細根系を採取した。細根系は4次根系ごとに分け、その後次数分けを行った。1 mと3 m地点の4次根系の次数別形態特性を比較した結果、細根系を構成する個根数には幹からの距離に応じて有意差は認められなかった。また、各次数根の平均直径において有意差は認められなかったが、1~4次根すべてにおいて3 m地点のほうが太くなる傾向にあった。分岐強度(根長当たりの分岐数)は水平距離が大きいほど小さくなり、単位面積当たりの根密度は小さくなる傾向であることが明らかとなった。 また、異なる土壌酸緩衝能に生育するヒノキ7林分における細根系の次数形態特性の変動性について、国際誌Plant and Soilに投稿した。同調査地において行われた細根量、形態に関する過去の研究では直径分類が用いられており、土壌酸緩衝能の違いで有意な差は認められなかった。しかし、本研究では根端から4次根までの無傷完全な細根系を採取し、次数分類を行い、次数別形態特性と土壌化学性の関係性を調べることで、酸緩衝能の低い土壌では直径が細く根端数が多い細根系が生産されることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度における特筆すべき成果として、上記研究の実績のとおり「土壌酸緩衝能に対するヒノキ細根系の次数別形態特性の応答」に関して国際誌Plant and Soilに投稿したことである。酸性化土壌においてヒノキ細根系の根端数は増え、直径は細くなることが明らかとなった。既知の直径分類による細根形態では土壌酸緩衝能の違いで有意差が認められなかったが、機能をより反映する次数分類を用いることで直径や個根数に有意差が認められることが明らかとなった。酸緩衝能の低い土壌では直径が細く根端数が多く重量が小さい細根系が生産されることが明らかとなった。直径が細い細根系は寿命も短く、酸緩衝能の低い土壌ではターンオーバーが大きい細根系が多く生産されていることが示唆された。 また、幹からの距離に応じた細根系の次数別形態特性の変動性を明らかにした。幹からの距離に応じて細根系を構成する次数別の個根数は変動しないが、細根の分岐強度は幹からの水平距離が大きいほど小さくなった。この研究においては第50回根研究集会、第67回日本生態学会、第131回日本森林学会で発表した。以上からおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
樹幹からの水平距離、深さ別に応じたヒノキ細根系の次数別形態特性を明らかにするために、本年度採取済みの細根系の次数解析を行う。 また、樹幹からの水平距離、深さ別で細根機能の次数が変動するかを明らかにするために各次数の個根の組織解剖学的解析も行う。
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