2019 Fiscal Year Annual Research Report
ほ乳類・鳥類の酸性キチナーゼ (Chia) における機能特性と食性に関する研究
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18J23382
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
田畑 絵理 工学院大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 酸性キチナーゼ / Chia / 家畜 / 飼料 / キチン / 進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
キチンは、N -アセチル-D-グルコサミン (GlcNAc) の重合体で、昆虫、甲殻類、真菌類などの多様な生物の主要構成成分である。昆虫をはじめとするキチン含有生物の飼料化が提案されているが、キチンの難消化性への懸念から、実用化には至っていない。申請者はこれまでに、キチン分解酵素である酸性キチナーゼ(Chia)が、ニワトリとブタ、コモンマーモセットの胃で大量に発現し、胃と腸の条件でキチンを分解すること(Tabata et al., 2017; Tabata et al., 2017; Tabata et al., 2019)、また、食性が動物の胃におけるChiaの発現レベルとキチンの分解性を決めることを明らかにした(Tabata et al., 2018)。 本年度は、家畜であるブタの体内で、Chia によってキチンが分解され、健康に良いとされているキトオリゴ糖が生成され得ることを明らかにした。また、食品や医療分野での応用利用が期待されているキトオリゴ糖の生産に、ブタ Chia が利用できることを提案した(Tabata et al., 2019)。また、イヌ(肉食性動物)の Chia のキチナーゼ活性の活性低下の原因解明とその分子進化の解明に取り組んだ。イヌ(肉食性動物)の Chia のキチナーゼ活性低下原因の解明のため、活性の高いマウス(雑食性動物)の Chia とのキメラ体を作製、解析することで、不活性化の要因となる領域を特定した。さらなる原因領域の絞り込みの結果、イヌ Chia の不活性化に関与する 7 アミノ酸を特定した (Tabata et al., 論文準備中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
・当初の計画どおり、家畜であるブタの体内で、脱アセチル化度の高いキチンが Chia によって分解され、キトオリゴ糖を生成することを示した。この研究成果は、国際学術誌 Scientific Reports にて報告した。 ・当初の計画どおり、マウス Chia 配列の一部を導入することで、イヌ Chia を活性化した。さらに複数のアミノ酸置換体を作製、解析することにより、不活性化の原因となる 7 アミノ酸を同定した。さらに、当初の計画には無かったが、イヌが属する食肉目 Chia を解析したところ、昆虫を食べない多くの種において、Chia が偽遺伝子化していたことが分かった。現在、さらなる不活性化要因の解明の実験を進めるとともに、論文を執筆中であり、国際学術誌に投稿、受理されることを目指している。
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Strategy for Future Research Activity |
①イヌ Chia の活性低下の原因解明 昨年度は、キチナーゼ活性が高いマウスと、活性の低いイヌの Chia 間でキメラ体 Chia を構築、解析し、エクソン 6-7 がコードする領域に、イヌ Chia の活性低下の要因があった。そして、同領域上のマウス Chia で保存されている 7 アミノ酸をイヌ Chia に置換し、活性化させることができた。本年度は、イヌ Chia 不活性化の要因となり得る 7 アミノ酸から、さらなる原因アミノ酸の絞り込みを行う。そのため、マウスおよびイヌ Chia の各種アミノ酸変異体を作製する。さらに、同定した原因アミノ酸の進化の過程における保存性を、様々な食性の動物の Chia と比較し、肉食性動物における Chia の不活性化の原因とその必然性を明らかにする。本研究成果は、国内および国際学会にて発表し、また、国際学術雑誌に受理されることを目標としている。
②Chia の活性化機構に関する研究 これまでに、マウス Chia が、pH 2.0 において、Cl 濃度依存的に活性化する結果を得た。本年度は、pH 7.0 における Chia の Cl によるマウス Chia の活性化の有無を検討し、Chia の Cl による活性化が、プロトンおよび Cl イオンが豊富な胃の環境に特有の現象かどうかを明らかにする。また、これらの実験を、低分子量発色基質に加えて、高分子量キチン基質でも検討する。本研究成果も、国内および国際学会にて発表する予定である。
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Research Products
(5 results)