2018 Fiscal Year Annual Research Report
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18J23399
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Research Institution | Nagahama Institute of Bio-Science and Technology |
Principal Investigator |
古田 明日香 長浜バイオ大学, バイオサイエンス研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 全能性細胞 / 着床前胚 / 幹細胞 / 可視化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、KSRの類似品であるSSR(StemSure Serum Replacement)を用いた場合にも、MuERV-L陽性細胞が効率よく誘導されることを明らかにした。また、SSRの構成成分である無機塩、微量元素、アミノ酸、ビタミン、および数種の生理活性物質からチアミン、アスコルビン酸、またはインシュリンを含まないSSRを作成し、MuERV-Lの発現に及ぼす影響を検討した。その結果、アスコルビン酸を含まないSSRにおいてMuERV-L陽性細胞の割合が顕著に減少することが示された。また、インシュリンを含まないSSRにおいて、MuERV-L陽性細胞の割合が増加することが示された。さらに、SSRからインスリンを除くとMuERV-L陽性細胞が顕著に増加し、通常のSSRの半分の量加えた場合にはさらに増加し、1.5倍量加えた場合では顕著に減少することが示された。これらのことから、アスコルビン酸はMuERV-L陽性細胞の誘導を促進し、インシュリンは抑制的に働くことが明らかとなった。 MuERV-L陽性細胞の遺伝子発現を網羅的に解析するために、MuERV-L陽性細胞をソーティングし、RNA-seqを行った。その結果、MuERV-L陰性細胞とKSRまたはSSRで誘導したMuERV-L陽性細胞の遺伝子発現を比較すると、MuERV-L陽性細胞において解糖系に関連する遺伝子発現が顕著に低下しているのに対して、TCA回路や酸化的リン酸化に関与する遺伝子の発現にはほとんど変化が認められないことが示された。これらのことから、MuERV-L陰性細胞と陽性細胞では、エネルギー代謝経路の変換が生じる可能性が考えられた。今後、この点について阻害剤を用いた実験を行うことにより明らかにしていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は、KSRに含まれるアスコルビン酸とインシュリンがMuERV-L陽性細胞の誘導に深く関与することを明らかにできた。また、RNA-seqにより、多能性細胞から全能性細胞の変換にはエネルギー代謝経路の変換を伴うことを示唆できた。これらのことから、本研究課題は「おおむね順調に進展している」と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに、多能性細胞から全能性細胞に変化する際にエネルギー代謝の変化を伴うことを明らかにした。2019年度は、エネルギー代謝経路を人為的に変換させることにより、多能性細胞から全能性細胞を誘導できるかどうかについて検討を行う。また、複数のマーカーを用いた「真の全能性細胞」の同定についても並行して行う予定である。
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