2019 Fiscal Year Annual Research Report
心臓のエネルギー代謝における心臓線維芽細胞と心筋細胞の相互連関
Project/Area Number |
18J23428
|
Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
古川 希 群馬大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
|
Keywords | FGF21 / 心肥大 / 心不全 / エネルギー代謝 / 線維化 |
Outline of Annual Research Achievements |
心筋細胞・線維芽細胞特異的FGF21欠損マウスを作製し、ベースラインでタモキシフェンによる薬剤投与の影響が見られないことを確認し、TACによる圧負荷を加え心肥大モデルを作製した。 (1)線維芽細胞特異的FGF21欠損(FGF21fKO)マウス: コントロールであるFGF21floxマウスと比較し、FGF21 fKOマウスではTAC後、著明に収縮率の低下、左室拡張末期径(LVEDD)の増悪が見られた。コンダクタンスカテーテルによる心機能解析では、コントロールマウスのTAC群と比較し、FGF21 fKOマウスのTAC処置群で、左室弛緩能(Tau)の著明な増悪が見られた。また、これらのマウスの心重量を測定したところ、コントロールと比較してTAC処置により心重量が増加、FGF21 fKOマウスでは更に増悪していた。RNAサンプルの解析では、心肥大マーカーであるANPやBNP、線維化マーカーであるCTGFの発現がTAC処置により増加し、FGF21 fKOマウスでは更に増加していた。心ストレスマーカーであるSERCA2aや、代謝関連因子であるPGC-1αはTAC処置により低下し、FGF21 fKO マウスのTAC処置群ではさらに低下していた。 (2)心筋細胞特異的FGF21ノックアウト(FGF21cKO)マウス: 心機能は、コントロールマウス(MerCreMer[-]/FGF21fl/fl、MerCreMer[+]/FGF21fl/fl[-])と比較し、FGF21 cKOマウスで有意な収縮能の低下・左室拡張末期径の増悪が見られた。また、これらのマウスの心重量を測定した結果では、コントロールと比較してTAC処置により心重量が増加、FGF21 cKOマウスでは更に増悪していた。RNAサンプルの解析についても、FGF21 fKOマウスと同様の結果が得られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
心筋細胞・心臓線維芽細胞特異的FGF21欠損マウスにTACによる圧負荷を加え、両欠損マウスにおいて、コントロールのTAC群と比較して心機能増悪・心重量増加などの傾向が見られた。特に、心筋細胞特異的FGF21欠損(FGF21cKO)マウスとして薬剤誘導Cre (MerCreMer) を用いたが、Cre誘導段階での心臓への影響が大きく、ノックアウトの評価が複雑になることが懸念された。そのため、非誘導型のαミオシン重鎖遺伝子プロモーターCreにて心筋特異的にFGF21を欠損するマウスの作製に着手し、その結果も考慮する必要がある。また、FGF21全身欠損マウスは心肥大や線維化を増悪させることがこれまで言われており(Planavila A et al; Nat. Commun. 2013)、このマウスを用いて圧負荷モデルを作製、解析を行うことで、心臓線維芽細胞に由来するFGF21と心筋細胞に由来するFGF21の間で、心機能に与える影響にどのような相違があるのかを明らかにする必要がある。FGF21全身欠損マウスは現在、繁殖中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
線維芽細胞特異的FGF21欠損マウスや心筋細胞特異的FGF21欠損マウスの解析を進めると同時に、全身欠損マウスも同様に圧負荷モデルを作製し、コンディショナル欠損マウスと比較検討していく。また、それぞれの欠損マウスで心機能が増悪するメカニズムについて、詳細に検討していく。 1)心エコー: TACの手術前および術後1,3,6週で計測し、心肥大および心機能について評価する。2)コンダクタンスカテーテル: 圧負荷の程度の評価および左心機能をコンダクタンスカテーテルにて評価する。特に、左室のエネルギー効率を推定できる指標を計測する。3)核医学トレーサーを用いた心臓エネルギー代謝の定量: マウスの尾静脈から脂肪酸のトレーサーである125I-BMIPP、グルコースのトレーサーである18F-FDGを注入し、一定時間後に心臓を取り出し、ホモジナイズして、心臓へのトレーサーの取り込みを計測し、組織重量で補正することで、心臓への脂肪酸および糖の取り込みを定量化する。4)病理学的検討: TACによる圧負荷モデル作製後、3または6週にて心臓を採取し、一部を急速冷凍し、一部をホルマリン固定して組織切片とする。組織学的検討は、マッソン・トリクローム染色で、線維化を定量化する。(Koitabashi N et al; J Clin Invest. 2011)。5) 心筋エネルギー代謝の変化についてメタボローム解析を行い、評価する。 現在までの結果からFGF21は病的心臓リモデリングに対して保護的に働くと考えられる。そのためFGF21を過剰発現させるウイルスベクター (AAV-FGF21) を作成し、TACモデルに投与し、心不全抑制効果があるかを検討する。
|
Research Products
(3 results)