2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18J23456
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
倉見谷 航洋 横浜国立大学, 理工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 統合運用ハミルトニアンラーニング基礎の確立と実証 / 推定精度1桁の向上 / 海外短期留学 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、ダイヤモンド NV 中心スピン量子系を用いた量子情報技術の基礎確立を念頭に、ハミルトニアンラーニングと GRAPE アルゴリズムの統合運用技術を確立し、実験に利用することでその効率や正確さについて評価し、量子指紋認証技術の基礎部分を確立した。 第一課題である統合運用の確立であるが、実際に研究実施計画書のアイディアを実装し実験したところ、NV 中心のハミルトニアンを特徴づける近傍 C13 核スピンとの超微細相互作用を誤差 10kHz の高精度なオーダーで推定できた。これは従来手法(ODMR:光検出磁気共鳴を用いたスペクトル解析)の精度と比較して1桁の精度向上であり、統合運用が効果的であることを実証できた。 続いて、先述の統合運用スキームにいくつかの修正を行い、より実用的な運用を可能とすることを試みた。まず提案段階での統合運用スキームは情報論的に不明瞭な点が多かったため、これらを情報理論より再検討し、より妥当性の高いアプローチで直接的なパラメータ推定の高効率化が可能となるように理論の修正を行った。また、統合運用手法の実証にあたり、ベイズ推定に伴う膨大な計算量ならびに計算時間も問題として浮彫になった。これに対して我々はGPGPU 大規模並列計算の導入による抜本的な計算能力向上によって改善した。市販の GPUである NVIDIA GTX1080(科研費購入物品)を利用し、ベイズ推定に必要とされる行列計算を GPU上で実装した結果、1万種類程度のハミルトニアン対角化問題は数秒で解けるようになり、CPU による実装と比較して数千倍の計算能力を確保できた。これは我々の統合運用手法が現実的な時間オーダーで実施可能であり機械学習が実用的な意味で有意に実行可能であることを意味する。 また、ドイツのウルム大学に1か月ほど滞在し、共同研究の模索も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本課題で提唱しているスキームの実用的な運用を目指すにあたり、計算能力の向上という専門外の事案を本格的に取り組まなければならないことが判明し、これに想定より時間を要してしまった。しかし、実績概要に記述の通りその点の課題はGPGPU導入の成功により解決の見通しが立っているため、次年度の研究計画に大きな修正は必要ないと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究成果である①修正版の統合運用理論②GPGPU計算に基づく計算能力向上の2点を統合し、統合版ハミルトニアンラーニングの実用的な運用を可能にする。このアプローチによって、ハミルトニアンラーニングのパラメータ推定精度を前年度よりさらに一桁向上させる。また、必要に応じてさらにGPUサーバーの導入などを行って計算能力の底上げを実施する。 その後、研究計画に記載の通り本統合運用ハミルトニアンラーニングに基づくNV中心スピン系に対する包括的な高忠実度量子制御を可能とする。 また、発展的な試みとしてハミルトニアンラーニングのスキームを量子測定理論に適用し、NV中心スピン系の量子シングルショット測定の忠実度向上も図っていきたい。
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Research Products
(7 results)