2018 Fiscal Year Annual Research Report
スピンペルチェ効果の現象解明のためのマイクロスケール多物性同時計測手法の構築
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18J23465
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山崎 匠 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | スピン流 / スピンペルチェ効果 / 熱電変換 / サーモリフレクタンス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はスピン流による熱流生成現象「スピンペルチェ効果」により生じる双極子型熱源およびその生成過程の実験的実証を目的としている.今年度は物質・材料研究機構のスピンエネルギーグループの下に滞在し,熱応答計測装置の構築に取り組んだ. スピンペルチェ効果による温度変化は非常に熱応答が速く,その生成過程を検出するためには従来の計測手法の周波数上限(約100 Hz)を大きく超える周波数領域で熱応答を計測する必要がある.そこで,反射率の温度依存性による温度測定法を応用したロックインサーモリフレクタンス(LITR)装置を構築し,スピンペルチェ効果測定の実施および健全性検証を行った.Pt/YIG系に対して本手法を適用した結果,スピンペルチェ効果による温度変動の計測に成功した.また,Ni薄膜に適用した場合には磁性金属に生じる熱電効果(異常エッチングスハウゼン効果)の計測にも成功し,熱電・熱スピン変換現象を検出する熱応答計測装置として,LITR装置の有用性を示すことができた.さらに,スピンペルチェ効果および異常エッチングスハウゼン効果に対し,10 Hzから1.5 MHzまでの周波数依存性測定を実施した.その結果,異常エッチングスハウゼン効果による温度振幅は高周波数領域においてもほぼ一定の値を示すのに対し,スピンペルチェ効果による振幅が減衰する振る舞いを観測した.類似した対称性を有する2つの効果において高周波特性に差異が現れたのは,両者の熱源サイズの違いによるものだと考えられ,LITRによる高周波数測定はスピンペルチェ効果による熱源の厚みスケールを含む情報を取得できることを示唆する結果となった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
サーモリフレクタンス法を用いた熱応答計測装置を構築し,スピンペルチェ効果測定の妥当性検証まで行った.また,信号強度が減衰する高周波数領域においても有意な結果が得られ,熱応答計測装置の基礎部分は大方構築し終わった.さらに試料保持機構としての高温高真空マイクロプローバの開発も同時並行で進めており,研究開始段階の計測装置開発計画を前倒しに行っている状況である.よって当初の計画以上に研究が進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
LITR装置による高周波数領域での測定結果からスピンペルチェ効果の熱源サイズを抽出するための解析モデルを構築する.さらに室温以上の温度領域におけるスピンペルチェ効果の定量評価装置の開発に向け,名古屋大学でのLITR装置構築,2ω法を用いた熱伝導率測定への拡張,試料保持機構としての高温型高真空マイクロプローバの導入,に取り組む. 当初の予定では,高温タイプおよび磁場印加タイプの2種類の物性測定用プローバと熱応答計測装置を構築し,熱伝導率測定にはプローバによる接触式測定法を取り入れる予定であった,しかしながら,有限要素解析および予備実験により真空中でのプローブと試料間の接触熱抵抗の寄与が無視できないほど大きいことが判明したため,熱伝導率測定として非接触型である2ω法を導入する.ここで,2ω法では温度検出にサーモリフレクタンス法を用いること,そして高温領域でのスピンペルチェ効果の測定が相反現象であるスピンゼーベック効果との比較に必要であることから,プローバ式測定装置と熱応答計測装置を1つに統合し,スピンペルチェ効果の定量評価装置の開発を目指す.
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Research Products
(4 results)