2019 Fiscal Year Annual Research Report
階層と社会関係資本に関する実践的研究ー差異化・包摂・承認を手がかりにー
Project/Area Number |
18J23487
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
糸数 温子 一橋大学, 大学院社会学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 社会階層 / 子どもの貧困 / 文化的再生産 / 沖縄 / 遊び / 居場所 / ホームレスサッカー / コミュニティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、階層再生産の理論的枠組みを基に、生活困難層の若者たちと〈支援者〉との相互行為に注目し、支援する/されるに固定されない新たな社会関係を取り結ぶ〈支援〉とは、いかにして生活困難層の若者たちの移行を支えうるのかを検討するものである。その際、「差異化」「包摂」「承認」という概念を手がかりに、日常生活の支援現場となる「居場所」や、コミュニケーションを促す空間や状況を調整した<場>としてのスポーツイベントを取り上げる。上記、研究目的達成のために以下3点の研究課題に取り組む。2019年度は、ⅡとⅢを中心に実施した。 Ⅰ.階層と社会関係資本に関する理論的検討/Ⅱ.学歴競争を〈降りる〉若者たちの進路選択と〈支援者〉の働き(実証研究①)/Ⅲ.「遊びのある」支援活動によって構築する新たな社会関係資本の検討(実証研究②) Ⅱ.学歴競争を〈降りる〉若者たちの進路選択と〈支援者〉の働き(実証研究①) 沖縄県内における「子どもの居場所」支援事業の現場調査を継続。場の参与観察だけでなく、官僚らへのインタビュー調査を追加した。さらに、沖縄県内紙の記事検索を行い、沖縄における「子どもの居場所」の用法、求められる機能などを分析した。 Ⅲ.「遊びのある」支援活動によって構築する新たな社会関係資本の検討(実証研究②) 趣味や余暇によるコミュニティの構築は、いかにして〈支援〉の現場において活用されうるのか。生活困難層の若者支援において「遊びのある」支援プログラムの効果を検証する。特に、大会という場が持つ特性を明らかにするにあたり、2019年度は1件の海外調査を実施。HOMELESS WORLD CUP FOUNDATION(於英国)を訪ね、スポーツと社会包摂の活動実践を現地調査した。その現地調査報告を『一橋スポーツ研究』に投稿することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成31・令和元年度は、当初の研究計画書の予定通り、沖縄での資料収集とフィールドワーク、英国ウェールズでのホームレス・ワールドカップのフィールドワーク、そこから現地調査報告として紀要に掲載することができた(http://hermes-ir.lib.hit-u.ac.jp/rs/handle/10086/31073)。国内学会での学会発表も積極的に行うことができ、さらにその知見を基にした沖縄県内のNPO団体や支援団体へスーパーバイズにも関わることができた。ただし、当初の計画以上の効果や実績が上げられたかと言うと十分ではない。
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Strategy for Future Research Activity |
(これまで進めてきた研究実施計画について変更)COVID-19による、HOMELESS WORLD CUP2020の中止に伴い海外調査を断念し、国内比較に切り替える。さらに、オリンピックの延期に伴いJFA等への聞き取り調査も変更する。ただし、今後のCOVID-19の影響により状況が変わることも予測される。 Ⅱ.学歴競争を〈降りる〉若者たちの進路選択と〈支援者〉の働き(実証研究①)/Ⅲ.「遊びのある」支援活動によって構築する新たな社会関係資本の検討(実証研究②)をそれぞれ論文化する。その後、それまでの研究の総合的成果のまとめを「日本社会学会」で報告し、沖縄での研究成果をジャーナル投稿を行う。沖縄県内において総合的なシンポジウム形式のイベントと勉強会を複数回に分けて開催する。一般向けに3年間の研究成果を報告し、今後の展望や課題について支援団体との意見交換を踏まえた報告書を作成するなど、学術研究に留まらないアウトリーチ活動を実践する。
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Remarks |
DOI入力不可のため加筆:糸数温子、ホームレスワールドカップ2019カーディフ現地調査報告 : 社会を変えるためにランドマークでフットボール大会を開く、一橋大学スポーツ研究、10.15057/31073
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