2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18J30013
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松田 純佳 北海道大学, 水産科学研究院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 鯨類 / ストランディング / 食性 / 胃内容物 / 同位体 |
Outline of Annual Research Achievements |
鯨類は海洋生態系における最高次捕食者であり,その食性を知ることは海洋生態系保全のため必要不可欠である。本研究では日本周辺海域に棲息する鯨類の食性を,ストランディング(漂着・混獲)個体の胃内容物分析と各種同位体比分析により,種ごとに特徴を明らかにすることを目的とし,研究を行った。 初年度は,日本各地でストランディングしたカマイルカの胃内容物と炭素窒素安定同位体比分析から,その食性の特徴をまとめた。その結果,カマイルカは沿岸性の浮魚類やイカ類を多く摂餌しており,マイワシ,カタクチイワシ,スルメイカ,マアジ,スケトウダラなど漁獲対象種を主に利用していることが明らかになった。また安定同位体比分析結果を海域ごとに比較した結果,海域間での有意な差が認められず,海域間での食性の大きな違いは見られなかった。カマイルカは日本各地において定置網への混獲が報告されており,本種の食性と漁獲対象種の重複については今後も留意する必要がある。その他にヒゲクジラ(ミンククジラ,ザトウクジラ,シロナガスクジラ)のヒゲ板の同位体を分析し,それぞれの鯨類がどのあたりで摂餌を行っていたかを推定した。 2018年度は,北海道において,58件約100頭のストランディング(漂着,混獲)が発生した。そのうち40件については調査もしくはサンプリングを行うことができた。特に,2018年2月7日には目梨郡羅臼町において,イシイルカ約40個体が流氷に閉じ込められ,死亡した。そのうち12個体の回収に成功し,それぞれの個体について胃内容物及び安定同位体比分析用の筋肉組織の採材を行った。今後詳細な餌生物種の同定を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
北海道のみならず,日本全国のストランディング標本を収集することができた。特に日本でまだ知見の少ないアカボウクジラ科鯨類の胃内容物及び筋肉標本を集めることができた。 カマイルカは日本周辺海域を回遊しており,日本各地で混獲報告もある身近な小型ハクジラである。本種の日本周辺海域における食性情報は乏しく,本研究により明らかになった食性情報は本種の基礎的な生態情報として重要であり,現在論文化を進めている段階である。 計画時点では,ハクジラについてのみ注目していたが,2018年度にヒゲクジラのヒゲ板の分析を行うことができた。ヒゲ板の分析により,回遊履歴を追うことができている。回遊履歴と食性を併せて考察することで,ヒゲクジラの詳細な食性の解明が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は餌生物情報も併せて収集することで,どのような特徴を持つ鯨類が,どのような特徴を持つ餌生物を利用しているかを体系的に明らかにする予定である。 また,ヒゲクジラのヒゲ板の分析については,分析する同位体の種類を増やすことで,より詳細な回遊と摂餌の傾向を明らかにする。2018年度は同位体の分析を十分に進めることができなかったため,2019年度は同位体分析に注力する予定である。 2019年度も2018年度と同様に,ストランディング調査及び胃内容物分析を継続して行う。
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Research Products
(7 results)