2018 Fiscal Year Annual Research Report
フタル酸エステルの母体暴露が世代を越えて精子形成異常を引き起こすエピ変異の解明
Project/Area Number |
18J40019
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
丹藤 由希子 東北大学, 加齢医学研究所, 特別研究員(RPD)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
|
Keywords | DEHP / DNAメチル化 / 精子形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
プラスチックの可塑剤として社会生活の中で広範囲に用いられているジエチルヘキシルフタル酸(DEHP)を妊娠マウスに暴露すると、F1からF3の雄で精子や精細管の異常および精原細胞の機能異常が認められ、それがDNAメチル化変化によるものと考えられている。しかし、そのメカニズムは明らかになっていない。そこで本研究は、DEHPが世代を越えて精子形成に異常を及ぼすエピゲノム変異を同定することを目的としている。 研究計画に則り、本年度は以下の項目を実施した。 まず、メスのC57/BL6マウスとオスのOct4-GFPマウスを交配し、妊娠した雌マウス(F0)を二群に分けて妊娠8~18日にかけて毎日、DEHPまたはDEHP溶解液であるコーン油(非暴露群)を経口投与した。投与後の胎齢19.5日目オス胎仔精巣のDEHP暴露群と非暴露群においてOct4-GFP陽性の未分化生殖細胞およびGFP陰性の体細胞をフローサイトメーターで分取し、RRBS法によるメチロームを行った。その結果、精子形成に関連した13遺伝子のプロモーター領域のシトシンのメチル化が、非暴露群に比べてDEHP暴露群で5%以上増加していた。一方、これらの遺伝子発現レベルは低く、精子形成が始まらない胎齢19.5日には発現していないと考えられた。 この解析でメチル化増加が見られた遺伝子のメチル化と発現変化を追跡するため、生後200日目におけるDEHP暴露群または非暴露群のF1オスより摘出した精巣の精子形成期細胞についてメチロームおよびトランスクリプトームを行ったところ、個体間の値の差異が見られたものの、メチル化率が増加し、かつ発現が低下した遺伝子が複数個見いだされ,そのいくつかは、DEHP暴露後の胎齢19.5日目にメチル化率の増加が見られた精子形成関連遺伝子であった。よって、これらの遺伝子がDEHPによって生じたエピ変異の有力候補と考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたDEHP暴露マウスモデルの確立、DEHP暴露直後の胎仔精巣におけるメチロームとトランスクリプトーム、暴露後のF1精巣における生後200日目のメチロームとトランスクリプトームを実施し、メチル化と発現変化の共通した遺伝子を抽出するところまで達成したため。
|
Strategy for Future Research Activity |
予定通り、DEHPの標的となりうる候補遺伝子の絞り込みをおこなっていくが、F1精巣のメチロームとトランスクリプトームデータについて、データに個体間の差異が生じているため、早急に原因を解決して信頼のできるデータを追加する。 また、メチロームで検出したメチル化変化率が大きくないため、その差をバイサルファイトシーケンスで検出するのは難しいと考えられる。そこで、予定していたF2、F3、F4の解析をF2のみとし、F2についてRRBSで詳細にメチル化変化を検出することに変更する予定である。
|