2019 Fiscal Year Annual Research Report
豚レンサ球菌と近縁菌種の比較ゲノム解析による病原因子の探索
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18J40081
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
黒木(石田) 香澄 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | Streptococcus suis / 比較ゲノム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
Streptococcus suisは人獣共通感染症を引き起こすが、莢膜以外に病原因子として確定しているものはない。また、分類再検討が行われる以前まではS. suisとされていたStreptococcus parasuis, Streptococcus ruminantium, Streptococcus orisrattiは健康豚からは検出されるが病豚からの検出例は少なく、ヒトへの感染例もほとんどないことから毒力が低いと推測される。そこでS. suisの病原因子を探索するには、これら近縁菌種との比較解析が有用と考え、昨年度は比較ゲノム解析を実施した。S. suisに最も近縁であると考えられるS. parasuis は基準株を含む5株の全ゲノム配列をIllumina社のMiSeqで決定し、A5-miseqでアセンブル後、Prokkaでアノテーションを行った。S. suis, S. runimantiumおよびS. orisrattiはすでにデータベースに登録されている配列を使用し、これらのゲノム配列とアノテーションされたタンパク質のアミノ酸配列を比較した。C末端にLPXTGモチーフを持つタンパク質(以下、LPXTGタンパク質)は菌体表層に局在すると考えられる。これらのタンパク質は、生体への接着や定着のみならず、バイオフィルム形成への関与も示唆されることから、重要な病原因子候補であると考え、S. suis近縁菌種間でアミノ酸配列を比較した。いずれの菌種においてもLPXTGタンパク質は10-20個程度存在し、特定の菌種のみに存在するものがあった。また、S. suisの中でも強毒と考えられるグループにのみ存在するタンパク質も見出された。今後は強毒なS. suis株のみが有するLPXTGタンパク質の機能を解析するため、欠損株を作製し実験に用いる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度にはStreptococcus suisの病原因子を見出すため、S. suisと近縁菌種であるStreptococcus parasuis, Streptococcus ruminantium, Streptococcus orisrattiの比較ゲノム解析を実施した。その結果、各菌種に特徴的なゲノム配列やタンパク質の特徴が明らかになりつつあることから、研究課題はおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、全ゲノム配列を決定したS. parasuisのゲノム情報と、既にデータベースに登録されているS. suisおよび近縁菌種のゲノム配列を用いて、令和元年度に引き続き比較ゲノム解析を行う。その後、比較ゲノム解析でS. suisにのみ存在する遺伝子/タンパク質をピックアップし、それらを欠損させたS. suis株の細胞間マトリックスへの接着性、細胞の接着・侵入性およびバイオフィルム形成能を調べる。このように、S. suisにのみ存在する遺伝子/タンパク質をS. suisの病原因子候補としてピックアップし、それらの機能を解析することで、未知の病原因子を明らかにしていく。
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