2018 Fiscal Year Annual Research Report
ライマンアルファハローで明かす銀河進化におけるガス循環の解明
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18J40088
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
百瀬 莉恵子 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | Lyαハロー / クエーサー / 銀河進化 / IGM / CGM |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、クエーサー (QSO) という銀河種族の Lyα ハロー (LAH) について、Suprime-Cam/すばる望遠鏡で撮像された QSO LAH (赤方偏移 z = 6.42) の新しいデータと先行研究で調べられている 140 天体弱の QSO LAH データを元に、主に 1) LAH の性質を決定づける QSO 母銀河 (または QSO そのもの) の性質を調べ、2) LAH の赤方偏移進化を検証した。このプロジェクトは本研究課題のうち、「遠方星形成銀河種族 Lyα 輝線銀河 (LAE) 以外の LAH の調査」に該当する。このプロジェクトにより、QSO LAH は 1) QSO の進化段階に応じてその明るさが (おそらく広がりも) 進化する可能性があること、2) QSO LAH は遠方にいくにつれて Lyα 輝線の面輝度は暗く、サイズは小さくなっていることが明らかとなった。得られた結果は論文として投稿し (2018年9月)、現在査読中である。また、1) 2) の結果をより多くのサンプルを基に検証すべく、z > 6 の QSO LAH の観測をすばる望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡に提案した。 この他に、アーカイブデータを用いた銀河と銀河間空間ガス (IGM) の相関の検証も行った。このプロジェクトは研究課題のうち「大規模空間中のLyα 光子の調査」を発展させたものである。銀河の進化過程を左右する銀河へのガス供給には、銀河がいる大規模な環境も影響していると考えられる。 そこで公開されている銀河カタログと IGM 3 次元トモグラフィーデータを用い、銀河と IGM 間の相関を距離の関数として導出し、どのような種族・性質 の銀河が IGM の大規模な構造と強い相関を持つか調べた。得られた結果は現在投稿論文として準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の初年度の研究計画では、「LAH に関する研究」に関して 1) LAE 物理量と LAH の形状間の相関を調べ、2) 銀河進化モデルと LAH の形状について評価を行い、「大規模空間中の Lyα 光子の調査」に関して特別研究員採用前に取得された観測データの解析を進める予定であった。 まず LAH に関しては、既存の Hyper Suprime-Cam (HSC) による LAE カタログでは、観測条件などの問題により本課題を遂行するための銀河の個数及び銀河の明るさが不十分であるという問題が生じた。そのため本年度は LAE の LAH の研究は遂行できなかった。代わりに本年度は 2019 年度に行う予定であった「LAE より進化の進んだ銀河の LAH の調査」について研究を進め、QSO については投稿論文としてまとめることができた。QSO 以外の銀河種族の LAH の調査も進めており、2019 年度中の論文の投稿を目標としている。 次に大規模空間中の Lyα 光子の調査に関しては、HSC/すばる望遠鏡で取得されたデータ (2017A) について画像較正を行っている。同時に、2017A で取得されたデータではこの課題を達成するための感度に到達していないため、すばる望遠鏡に追加観測の提案も行っている。加えて、大規模空間中の Lyα 光子の調査を発展させた研究として、銀河と IGM の相関について新たに研究を始め、投稿論文を準備している。 このような進捗状況から、初年度に設定していた課題 (または代替の課題) はほぼ遂行できていると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
「LAH に関する研究」 LAE の LAH の研究は、共同研究で行われる HSC による LAE カタログの作成とその精度に依存するため直ちに遂行できるかは現時点では不透明という問題がある。そこでまず、LAE 以外の銀河種族の LAH の調査を行う。QSO については 2018 年度に系統的な調査を行ったことから、QSO (と LAE) 以外の銀河種族に特に着目し調査を行う。また、LAE の中でも活動性銀河格 (AGN) をもつ特殊な種族の LAH についても調べる。AGN をもつ LAE の LAH 調査は既存のアーカイブカタログを用いるため、HSC LAE カタログを必要としない。そのため、既存のデータで確実に研究を遂行できる。 LAH と銀河進化の包括的な理解には理論モデルによる予想も必要不可欠である。そこで、スイスにいる共同研究者 (Anne Verhamme 教授) らによるモデル銀河を用いて、LAH と銀河の繋がりを明らかにする研究も計画している (ただし、若手海外交流事業スイス枠に採択された場合)。 「大規模空間中の Lyα 光子の調査」 既存の HSC/すばる望遠鏡で取得されたデータ (2017A) と、追観測が採択された場合の HSC 観測データを用い、大規模空間中の Lyα 光子の調査を進める。現在、HSC の解析ソフトによる問題で画像較正が正常に完了できないという問題があり、解画像較正が難航している。そこで HSC の解析ソフト開発チームの協力を仰ぎながら画像較正の最適解を見つけることを第一目標とする。画像較正をが終了したら、データの解析を進め、調査を遂行する。 また、現在このプロジェクトを発展させた新たな研究 (銀河と IGM の関係の解明:研究実績に記載) も遂行している。こちらも早々に投稿論文とし、まとめる。
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Research Products
(7 results)