2019 Fiscal Year Annual Research Report
ライマンアルファハローで明かす銀河進化におけるガス循環の解明
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18J40088
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
百瀬 莉恵子 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 銀河進化 / IGM / CGM / Lyα ハロー / 銀河種族 / 銀河諸性質 / 宇宙論的流体シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は「IGM の大規模構造と銀河の関係」について注力し研究を進めた。この研究は本課題における研究内容のうち「大規模空間中の Lyα 光子の調査」と密接に関係する。 本研究では、観測アーカイブデータとシミュレーションデータを用いて IGM と銀河の相互相関を計算し、銀河の持つ物理量/性質に応じた相互相関関数の変化を、観測・理論両方の観点から系統的に調べた。観測研究では銀河種族に着目し、IGM--銀河の相関関数の多様性を複数の銀河種族にわたり初めて調査した。その結果、1) 銀河種族によって属する Mpc 規模の IGM HI 密度環境が異なるが、基本的には、大質量の銀河ほど IGM HI 密度が高い環境にいる可能性がある事、2) AGN, SMG は銀河の周囲数 Mpc にわたってガスを電離させている事などを明らかにした。理論研究では、銀河の星/ハロー質量、星形成率、比星形成率毎にサブサンプルを構築し、IGM--銀河の相関関数がこれら物理量にどう依存するかを調べた。その結果、IGM--銀河の相関関数の強さはハロー質量に依存していることが明らかとなった。これらの結果を査読論文としてまとめ、投稿した (Momose et al. 2020a, b 査読中)。
「LAE 物理量と Lyα ハローの形状間の相関」について「シミュレーションを使ったモデル構築」の観点で海外の研究者と共に研究も始めた。本研究は、ジュネーブ天文台の Anne Verhamme 教授との共同研究である。Verhamme 教授を含む研究チームでは、宇宙論的流体シミュレーションの計算 (SPHINX: Rosdahl et al. 2018) から生成された銀河にLyα 輝線の輻射輸送計算を組み込んで擬似 Lyα ハローを生成している。現在、この擬似ハローのデータを用いて解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、1. LAE 物理量と Lyα ハローの形状間の相関の検証とその結果に基づいた銀河進化モデルの評価、2. LAE より進化の進んだ星形成銀河の Lyα ハローの調査、3. 大規模空間中の Lyα 光子の調査 という3つの研究を柱としている。 1. に関する進捗は、おおむね順調に進展していると評価する。研究1では観測データを用いた調査と理論モデルの構築を目標としている。観測研究に関しては、銀河カタログが作成中であることからまだ着手できていない。しかし、理論研究に関しては、2020年2月から Anne Verhamme 教授と共同で研究を進めている。現在は、Verhamme 教授より提供された理論データの解析を進めており、最終年度の間にはある程度の成果が期待される。 2. に関しては、私がこれまで研究してきた星形成銀河 (LAE) よりも銀河進化の進んだ段階にいると考えられているクエーサー (QSO) の Lyα ハローの調査を昨年度行った。その成果が本年度査読論文として科学雑誌に掲載された (Momose et al. 2019)。ゆえに、この研究2は順調に進展している。 最後に、3. に関しては、当初提案していた「大規模空間中の Lyα 光子の研究」は追加の観測データが取得されないことから進展していない。そこで本年度は、研究3に関係した「IGM の大規模構造と銀河の関係」を推進し、予想以上の成果を得る事ができた (Momose et al. 2020a, b 査読中)。現在、この研究をさらに発展させた議論も行っており、査読論文も準備中である (Momose et al. 2020c, d)。 以上を踏まえると、3つの研究全てにおいて、おおむね順調に進展していると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」に記載した3つの柱となる研究それぞれにおいて、今後の方針を記述する。 研究1:この研究は観測データを用いた調査と理論モデルの構築を目標としている。観測データを用いた調査の実行可能性は、共同研究者が主として進めている銀河カタログの作成時期に依存する。そのため、カタログが出来次第すぐに解析に着手できるように解析コード等の実行環境を整備する。理論モデル構築に関しては、現在解析を進めている。当初 Verhamme 教授とは、令和二年度に数ヶ月スイスに渡航し、追加のデータの解析と論文化作業を行う予定であった。しかし、COVID-19 の世界的蔓延により渡航が行えるか不透明であるため、まずは現在の理論データの解析とまとめを行う。もし渡航が可能となれば、さらなるデータを追加してより様々な環境/銀河物理量の擬似銀河と擬似 Lyα ハローに関して解析を進め、査読論文としてまとめる。 研究2:異なる銀河種族の Lyα ハローについては既に調査を行ってきた。この研究では、研究1の結果も踏まえて、銀河進化段階に応じて Lyα ハローの性質がどう変化するかをまとめる。 研究3:「大規模空間中の Lyα 光子の研究」を完遂すべく、追加の観測データ取得を目指す。同時に、現在進行している「IGM の大規模構造と銀河の関係」に関する研究をさらに発展させる。現在、令和元年度に行った研究を発展させ、IGM--銀河の相関関係とダークマターの密度分布に関する調査、IGM--銀河の相関関係の環境依存性の調査を行っている。また、ある銀河種族に着目した IGM--銀河の相関関係について査読論文も準備している。これらの調査結果をまとめ、査読論文とする。
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Research Products
(16 results)