2019 Fiscal Year Annual Research Report
バソプレシンニューロン細胞内塩化物イオンの高濃度維持機構とその生理学的意義の解明
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18J40103
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
佐藤(沼田) かお理 福岡大学, 医学部, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2018-10-01 – 2022-03-31
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Keywords | AVPニューロン / Cavチャネル / 自発的発火活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の研究においてラットAVPニューロンにN-type VGCC 、及び、3種すべてのT-type VGCCが発現していることをパッチクランプ法、及びRT-PCR法により明らかにした。本年度は、さらに、3種のT-type VGCCのうちどのタイプが機能的に発現しているのかを電気生理学的に明らかにした。T-type VGCCの薬理学的分別は、ニッケル(Ni; 高濃度:Cav3すべて、低濃度:Cav3.2)およびML218(Cav3.2及びCav3.3を特異的)への感受性を指標に行った。高濃度Ni(high Ni)存在下では、ホールセル電流が有意に抑制されたが、低濃度Ni(low Ni)およびML218は、効果がなかった。これらの結果から、AVPニューロンに機能的に発現しているT-type VGCCは、Cav3.1であることが明らかになった。 浸透圧の変化に伴いAVPニューロンの自発的発火活動が増減するメカニズムを知るために、まず、正常浸透圧条件下における自発的発火活動のメカニズムについてパッチクランプ法の電流固定法を用いて追究した。正常浸透圧のAVPニューロンの自発的発火活動は、自発的発火活動へ大きく寄与していることが知られている電位依存性Naチャネルの特異的阻害剤、テトロドトキシン(TTX)によって優位に抑制されたが、依然発火活動が起こっていた。このTTX非依存性発火成分は、Cav2.2特異的阻害剤であるω-CgTx存在下では変化が見られなかったが、high Ni存在下では発火活動がほぼ完全に抑制された。以上の結果より、AVPニューロンで発生する自発的発火活動は、TTX感受性電位依存性Naチャネルと、Cav3.1が関与していると結論付けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた、細胞内Cl濃度が高く維持されているAVPニューロンと同じニューロン種であり細胞内Cl濃度が低く維持されているOXTニューロンと比較検討する実験において、本大学の動物センター耐震工事のためにOXTトランスジェニックラットの納入・繁殖が大幅に遅れてしまった。しかしながら、その間にAVP分泌に重要な役割を担う自発的発火活動において、電位依存性Caチャネルが関与していることを明らかにし、その分子がCav3.1であることを突き止めることができた。この成果は、細胞内Cl濃度が高く維持されているAVPニューロンと同じニューロン種であり細胞内Cl濃度が低く維持されているOXTニューロンと比較検討する実験において、大きなカギとなる重要な発見であると考えられる。これらの研究結果は、令和2年3月中旬に紙面開催された第97回日本生理学会大会のポスター部門で発表している。遅れていたOXTトランスジェニックラットの繁殖については、11月末の搬入後、繁殖が順調に進み、3月の時点で実験に用いることができるまでにこぎつけることができた。 以上の点より、本研究目的を達成するための実験は着実に遂行されており、当初の予定をおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、当初の年度毎計画通りに研究を進めると同時に、昨年度実施する予定であった細胞内Cl濃度が高く維持されているAVPニューロンと同じニューロン種であり細胞内Cl濃度が低く維持されているOXTニューロンと比較検討する実験も行う。
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