2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18J40133
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野中 美応 東京大学, 医学系研究科, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 恐怖記憶条件付け / ストレス / PTSD / 脳損傷 / 神経活動履歴レポーターマウス / Immediate early gene / c-fos / 全脳活動履歴マッピング |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、①行動実験系の確立、②活動履歴レポーターマウスの繁殖・基礎データ収集 ③全脳活動履歴解析の手法の構築を行う計画であった。 ①については、数々の検討を重ねたにも関わらず、当初計画していた遠隔恐怖記憶消去の実験が困難だったため、ストレスによる恐怖学習の亢進(Stress-enhanced fear learning,SEFL)のマウスモデルの構築に切り替えた。この行動実験モデル変更は本研究の目的に合致している。 ストレスとして、暗室の中で短いパルス電気ショックを与える。その5日後に、別の箱にて、非常に弱い電気ショックで恐怖文脈条件付けを行うと、もともとストレスを受けていた動物群が高い恐怖反応を示し、3週間後の遠隔記憶テストでも恐怖記憶が亢進していることが示された。同様の実験系を、恐怖音条件付けの方式で行い、これによって形成された恐怖記憶の消去実験を行うと、5日前にストレスを受けた群は恐怖音条件記憶が消去されにくいことが分かった。これをもとに、次年度はストレスと恐怖記憶を担う細胞群を標識する実験を組む予定である。 ②については、マウスの繁殖を行い、細胞標識のタイミングについて基礎条件検討を行った。 ③について、20-30匹のマウスコホート群を灌流固定し、嗅球と小脳と脳幹を除く全脳の切片を作成し、c-Fosの組織免疫染色を行い、その撮像を半自動で行う手順を確立した。 さらに、ストレスの別の例として、トラウマ的外的脳損傷の研究を行っており、その恐怖記憶行動実験と組織免疫染色結果を論文にまとめる段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の本年度の計画のほぼ全ての項目を今年度達成することができた。特に、行動実験の確立と最適化については、当初の計画にあった遠隔恐怖記憶消去の実験系がなかなか立ち上がらなかったが、「ストレスによる恐怖記憶学習の亢進」という課題に切り替え、さらに動物実験装置もデザインし直すことによって素早く代替となる実験系を立ち上げた。
また、次年度から大量の動物組織を均等に組織染色し、比較定量解析するにあたって最初の実験系や解析手法の構築が重要になるが、最も時間のかかる行動実験の最適化に加え、組織染色の条件検討や、大容量の画像解析の方法の確立といった初年度の課題を着実に成し遂げているため、当初の計画以上の進展をしたと自己評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の計画に盛り込まれていた生化学の部分のみ、達成できなかった。具体的には、凍結脳から特定の脳領域をパンチングにより取り出し、そこから遺伝子発現解析を行うというものである。次年度はまずその実験系の立ち上げから行う。さらに、初年度に立ち上げた実験系をフルに活用し、本研究課題の最も肝となる実験(活動履歴レポーターマウスを用いて、ストレスによる恐怖記憶亢進の神経細胞レベルでのメカニズムを、全脳活動履歴解析によって解明するという実験)を行う。
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Research Products
(2 results)