2018 Fiscal Year Annual Research Report
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18J40134
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
丸山 美帆子 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | アセトアミノフェン / シードディッピング / 結晶欠陥 / インクルージョン / フェムト秒レーザー / 表面過飽和度 / 結晶安定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、アセトアミノフェンをモデル物質とし、結晶欠陥の発生状況と成長条件の依存性を調査した。これまでの研究により、結晶化を行う溶液の過飽和度が低いほど結晶内部の欠陥が低減することが分かっていたので、本研究ではまず超音波印加法によってアセトアミノフェン準安定形(Ⅱ形)結晶の種結晶を得、これらをできる限り低過飽和溶液にシーディングする方法を採用した。 成長条件として、具体的には溶液の初期過飽和度をパラメータとして変化させた。その結果、過飽和度0.79で結晶を成長させると、全体の37%程度が実体顕微鏡でも明らかなインクルージョンやクラックを含むことが分かった。過飽和度0.24で結晶成長させると、欠陥を含む結晶の割合は12%まで低減することが分かったが、欠陥の割合を0にすることはできなかった。観察の過程で、特に結晶サイズが大きいものほど顕著な欠陥が入ることを見出した。結晶サイズが大きいほど、結晶の面内での濃度分布が大きくなり、結晶が骸晶化するためと考えられた。これは、結晶が成長する際には溶液全体の過飽和度制御だけでは不十分であり、結晶の表面過飽和度(成長する個々の結晶がさらされる溶液濃度)が重要であることを示唆する。例えばより小さな種結晶を用いることで、結晶の面内過飽和度の差をできる限り小さくすることが可能である。そこで、種結晶を直接添加する従来の種結晶法とは異なる新しいシーディング法を考案した。比較的大きめの種結晶を溶液に浸して引き抜くことで、結晶表面から微小なクラスターをシーディングする。この方法を採用したところ、過飽和度0.24において欠陥を含む結晶を全体の6%まで低減させることができた。それぞれの条件で得られた結晶は、加速試験を行って結晶の安定性を評価した。その結果、これまでで最長のⅡ形結晶の安定性を実現することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2018年度の研究により、準安定形結晶の品質が飛躍的に向上した。他グループ研究においては数時間、せいぜい数日程度の安定性しか報告されていなかったアセトアミノフェンの準安定形(Ⅱ形)は、所属グループにおいて高品質で高い安定性を実現してきたが、昨年度の研究結果では所属グループ内でも最高の安定性を実現した。 また、結晶多形制御という観点から、新しい研究に着手することができた。人体でできてしまう尿路結石の研究である。尿路結石の主要成分にシュウ酸カルシウムがあるが、結石形成時には、シュウ酸カルシウムの結晶多形(シュウ酸カルシウム一水和物、シュウ酸カルシウム二水和物)が深く関与している。これまでの多形制御研究や、結晶の相転移現象のその場観察の経験があったことから、結石形成機序に新しい考え方を提案することができ、それに基づいた結晶化研究も進めている。シュウ酸カルシウムは、結晶多形制御の新しいモデル物質としても利用を進め、フェムト秒レーザーを用いた多形制御などもしていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、モデル物質として、アセトアミノフェンに加えてシュウ酸カルシウム、イブプロフェンを用いた準安定形の結晶化実験を行う。特に、準安定形結晶の成長過程をその場観察し、キラー欠陥の発生と成長条件の対応付を行う。結晶のその場観察は、実体鏡に加え、結晶表面の分子レベルの凹凸を視覚化できる微分干渉顕微鏡を適宜用いる。温度コントロールやpH変化によって溶液の過飽和度を変化させ、その時の結晶成長速度と欠陥発生の有無を追跡する。結晶によっては、成長条件で結晶形状が変化していくため、着目すべき主要な面について、成長速度の過飽和度依存性を調査する。これにより、キラー欠陥を発生させずに結晶成長する過飽和条件の範囲を明確化する。
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Remarks |
論文成果については、学生が関わったものについては学生を筆頭著者とし、申請者は責任著者として執筆推進した。申請者が責任著者のものには*印を付した。
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Research Products
(15 results)
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[Journal Article] Large-scale crystallization of acetaminophen trihydrate by a novel stirring technique.2019
Author(s)
Fujimoto, R., M. Maruyama*, S. Okada, H. Adachi, H. Yoshikawa, K. Takano, M. Imanishi, K. Tsukamoto, M. Yoshimura, Y. Mori
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Journal Title
Applied Physics Express
Volume: 12(4)
Pages: 045503-1-5
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Growth of high-quality metastable crystal of acetaminophen using solution-mediated phase transformation at low supersaturation.2018
Author(s)
Fujimoto, R., M. Maruyama*, Y. Mori, S. Okada, H. Adachi, H. Y. Yoshikawa, K. Takano, S. Murakami, H. Matsumura, T. Inoue, M. Imanishi, K. Tsukamoto, M. Yoshimura and Y. Mori
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Journal Title
Journal of Crystal Growth
Volume: 502
Pages: 76-82
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Crystallization of aspirin form II by femtosecond laser irradiation.2018
Author(s)
Tsuri, Y., M. Maruyama*, R. Fujimoto, S. Okada, H. Adachi, H. Y. Yoshikawa, K. Takano, S. Murakami, H. Matsumura, T. Inoue, K. Tsukamoto, M. Imanishi, M. Yoshimura, and Y. Mori
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Journal Title
Applied Physics Express
Volume: 12(1)
Pages: 015507-1-4
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] 溶液撹拌による医薬化合物アセトアミノフェンの準安定形2018
Author(s)
藤本吏輝, 丸山美帆子, 岡田詩乃, 安達宏昭, 吉川洋史, 高野和文, 村上聡, 松村浩由, 井上豪, 塚本勝男, 吉村政志, 森勇介
Organizer
第47回結晶成長国内会議(JCCG-47)
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[Presentation] 釣優香, 丸山美帆子, 藤本吏輝, 岡田詩乃, 安達宏昭, 吉川洋史, 高野和文, 村上聡, 松村浩由, 井上豪, 今西正幸, 塚本勝男, 吉村政志, 森勇介2018
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