2018 Fiscal Year Annual Research Report
カルシウムイオンに着目したKID症候群の病態解析:生体内観察とシミュレーション
Project/Area Number |
18J40190
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村田 光麻 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(RPD)
|
Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
|
Keywords | 角化 / カルシウムイオン / コネキシン / KID症候群 / 角化症 / 遺伝性疾患 / マウス / 生体内観察 |
Outline of Annual Research Achievements |
Keratitis-Icthyosis-Deafness (KID)症候群は、角層肥厚・角膜炎・難聴を特徴とする先天性の難病で、コネキシン26や30をコードする遺伝子の変異による。顔面を含む全身が侵され醜形を来すため、角層肥厚の病態の解明と治療法の開発が強く望まれている。 KID症候群をきたすコネキシンの変異は、細胞内外をつなぐヘミチャネルを形成し、異常に高いチャネル活性を持つことが近年明らかにされてきた2)。また、変異コネキシン26を表皮角化細胞のみで発現するようにしたマウスでは、病変が再現されることも明らかになり、角化症を来す原因細胞が、表皮角化細胞であることもわかってきた。しかし、表皮角化細胞におけるヘミチャネルの異常が、表皮角化細胞のどのような機能を通して病変の形成につながるかは明らかになっていない。 また、様々な分子がヘミチャネルを通りうるが、どの分子が病変の形成をもたらすのか、明らかではない。著者は、表皮の角化を来す遺伝性疾患の中にダリエー病、Olmstedt病など細胞内Ca2+の制御に関わる分子の変異があることに着目し、上記の我々の知見と併せ、KID症候群の病変形成には、表皮顆粒層における細胞内Ca2+濃度の制御異常が病変形成に重要であるとの仮説を立て以下の3つを明らかにするため研究を行っている。①KID症候群における表皮細胞内Ca2+動態の異常の有無の検証②Ca2+動態と角化の異常との因果関係の検討③KID症候群における異常角化の治療薬の探索。 本年度の研究では、①のマウスモデルを作成し、過角化の発症過程を二光子顕微鏡で観察した。その結果、著明な過角化が生じる3日ほど前から、表皮角化細胞内のカルシウム濃度が著明に上昇することが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
KID症候群のモデルマウスを作成し、細胞内カルシウムイオン濃度の観察と形態学的評価を行った。予測された現象が観察され、今後の解析の進展が期待される。また、シミュレーションに関しても、北海道大学に滞在し、議論と解析を進めた。さらに、今後必要となる、遺伝子改変マウスの導入・交配を予定通り遂行している。また、申請時点では予定して各種蛍光プローブ遺伝子を生体内で導入するための方法を模索し、系を確立した。以上の結果は初年度として、期待以上のものと言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
表皮細胞内のCa2+濃度の制御異常と角層の肥厚との因果関係の検証を行う。生体マウスの表皮細胞内のCa2+濃度を特異的に上昇させるため、Optogenetics、Chemogeneticsの2つの方法を用いる。Optogeneticsでは青色光の照射により開く陽イオンチャネル(チャネルロドプシン2)を発現するマウス、Chemogeneticsでは化学物質の投与により活性化し細胞内Ca2+を上昇させるGタンパク共役型レセプター(hM3Dq)を発現するマウスを用い、表皮細胞特異的にこれらの分子を発現するようにしたマウスを作成する。この系を用い、表皮細胞特異的なCa2+の上昇が、角層の肥厚を誘導するかどうかを、マウス生体内で検証する。 生体マウスでの薬理作用の検討と治療薬の探索。イオンチャネル阻害薬、Ca2+ポンプ阻害薬などの治療薬の候補が表皮細胞内Ca2+濃度に与える影響を評価するため、2光子顕微鏡で細胞内Ca2+濃度を観察しながら薬物を投与する。また、KID症候群モデルマウスに薬剤を投与し、組織学的に評価することで、角層肥厚の発症予防や治療が可能かどうかを検討する。
|