2019 Fiscal Year Annual Research Report
カルシウムイオンに着目したKID症候群の病態解析:生体内観察とシミュレーション
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18J40190
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村田 光麻 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | 細胞死 / 上皮細胞 / 上皮組織 / 角化 / 角化細胞 / 分化 / カルシウムイオン / マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
(a)変異コネキシン26の導入による表皮細胞内Ca2+濃度の変化の観察: KID modelマウス(研究室に導入済み)を作成し、観察した。顆粒層のCa2+濃度の著明な上昇が起こり、その2日後に、角層が肥厚することが明らかになった。また、タモキシフェン投与直後から2光子顕微鏡で観察することで、正常な皮膚ではCa2+濃度が上昇しない細胞において、短い間隔で、異常なCa2+上昇が起こることを確認し、モデル誘導直後から異常なヘミチャネルが形成されていることを明らかにした。 (b) 表皮細胞内のCa2+濃度の制御異常と角層の肥厚との因果関係の検証: OptogeneticsとChemogeneticsの2つの手法を用いた。Optogeneticsの系については、表皮角化細胞ではうまく働かないことが明らかになった。Chemogeneticsについては表皮角化細胞でCa2+上昇を引き起こすことに成功したが、目的とする組織内の位置での上昇は誘導できていない。そのため、さらに条件検討が必要である。 (c) KID症候群の病態を再現できるシミュレーションモデルの確立(共同研究): 本年度は長山研究室に滞在し、観察データにもとづいた改変を加えることで、より正確な定常状態のシミュレーションモデルの構築を進め、KIDモデルが完成した。今後、KIDモデルにより、観察された現象のうち、どの部分の説明を行うのが適切か、議論をすすめる。 (d) in vitroの実験系の確立: 申請段階では計画していなかったが、培養細胞を用いて、Ca2+と角化との因果関係の検討を行うこととした。まず培養細胞を入手し、Ca2+レポーター蛋白を発現するよう、ベクターによる導入を行った。さらに、多数の細胞を観察することで、in vivoで得られた結果が再現されることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に作成したKID症候群のモデルマウスを用い、細胞内カルシウムイオン濃度の観察と形態学的評価をさらに進めた。多数の観察を行った結果、詳細なカルシウム濃度異常の進展様式が明らかになるとともに、新たな仮説を必要とする現象を見出した。また、シミュレーションに関しては、北海道大学に本年度も滞在し、KID症候群の数理モデルを得ることができた。 また更に詳細な検討を行うためのin vitroの系を確立しつつある。 また、遺伝子改変マウスの導入・交配を予定通り進行し、さらに観察を行う予定である。以上の結果は2年度目として、期待どおりのものと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
(a)変異コネキシン26の導入による表皮細胞内Ca2+濃度の変化の観察: KID modelマウスの観察をさらに進め、角層肥厚が始まる瞬間の撮影を行いたい。 (b) 表皮細胞内のCa2+濃度の制御異常と角層の肥厚との因果関係の検証: Chemogeneticsについては表皮角化細胞でCa2+上昇を引き起こすことに成功したが、目的とする組織内の位置での上昇は誘導できていないため、さらに条件検討を行う。 (c) KID症候群の病態を再現できるシミュレーションモデルの確立(共同研究): KIDモデルにより、観察された現象のうち、どの部分の説明を行うのが適切か、議論をすすめる。 (d) in vitroの実験系の確立: 系を確立し、細胞内外のCa2+のキレートなどにより角化がどのように変化するのかを明らかにしたい。
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Research Products
(7 results)