2018 Fiscal Year Annual Research Report
Molecular mechanisms of influenza virus uncoating by ubiquitin signals
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18J40214
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
三宅 康之 名古屋大学, 医学系研究科, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2018-04-25 – 2021-03-31
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Keywords | インフルエンザウイルス / HDAC6 / ユビキチン / TNPO1 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒストン脱アセチル化酵素HDAC6のC末端のユビキチン結合ドメイン(ZnF)を哺乳類細胞HEK293Tで発現、精製した。精製ZnFとウイルスの破砕液を混合し、ZnFに結合しているユビキチン鎖の詳細な解析を行った。特定のリンケージを認識する特異的抗体を用いた結果、K48及びK63に反応するユビキチン鎖の存在が明らかとなったが、その量はわずかであった。この実験方法の詳細をMethods in Molecular BiologyのInfluenza Virus特集号に掲載した。 また、Priming処理(エンドソーム内部の環境を模倣する低pH)を行ったウイルス抽出液を用いた場合、ポリユビキチン鎖が優位にZnFに結合することを見出した。これはエンドソーム内でPrimingによりユビキチン化酵素または脱ユビキチン化酵素の活性が影響していることが示唆された。後期エンドソームにおいて、ウイルス内部のユビキチンタンパク質の性状を変化させることで、宿主細胞内のHDAC6との結合を促進し、ウイルスの殻をuncoatingしていると考察された。 さらに、インフルエンザウイルスゲノム(vRNP)の核輸送に関与する宿主因子を同定するため、核輸送タンパク質のsiRNAによるスクリーニングを行った。その結果、TNPO1タンパク質をノックダウンするとインフルエンザウイルスの形態によらず、ウイルス感染の効率が低下することが明らかとなった。さらにTNPO1はインフルエンザウイルスの殻を構成するM1マトリクスタンパク質と相互作用することで、インフルエンザウイルスの8本のvRNPをuncoating後に、細胞質内で個々に分散させていることを明らかにした。TNPO1はM1タンパク質のN末端のPY-NLS配列を認識して結合していることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
HDAC6に結合するインフルエンザウイルス内のユビキチン鎖の詳細な解析を行った。特定のリンケージを認識する特異的抗体を用いた結果、K48及びK63に反応するユビキチン鎖の存在が明らかとなったが、その量はわずかであった。また、ZnFドメインに結合させたウイルス由来のユビキチンをトリプシンで消化後、di-Glycyl-Lys(anti-GGK)抗体で精製し、質量分析で解析することで、ユビキチンのリンケージの同定を試みた。しかし、ウイルス試料の絶対量が不足していたため、質量分析で目的のペプチドを検出することは困難であった。 HDAC6のZnFを標的とするNanobodyがインフルエンザウイルスの感染を抑えていることを示した。なかでもウイルスの感染抑制に効果のあった二つのNanobodyをHEK293T細胞内で発現させ、タグに対する抗体で精製を試みた。その結果、これらのNanobodyにはより多くのHEK293T細胞由来のHDAC6タンパク質が結合していたことから、これらのNanobodyはより強力に結合し、感染を抑制していることを見出した。 インフルエンザウイルスゲノムは後期エンドソームでHDAC6によるuncoatingの後、細胞質内に放出され、核に移行する。そこで核輸送タンパク質のsiRNAによるスクリーニングを行った。その結果、TNPO1タンパク質をノックダウンするとウイルスの形態によらず、ウイルス感染の効率が低下することが明らかとなった。さらにTNPO1はインフルエンザウイルスのキャプシドを構成するM1マトリクスタンパク質と相互作用することで、インフルエンザウイルスの8本のvRNPをuncoating後に、細胞質内で個々に分散させていることを明らかにした。TNPO1はM1タンパク質のN末端のPY-NLS配列を認識して結合していることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
Van der Walらによると、diGlyペプチドの検出効率は4mgの細胞抽出液から10,000ペプチドを検出した(van der Wal et al.,2018 J.Proteomics)。今回、実験に用いた現実使用可能なウイルス量はその約1/1000量であり、さらにHDAC6タンパク質のZnFに結合した分子のみを標的にしているため、その検出効率はさらに低いと考察された。そこで今後は、ユビキチン活性化反応が実際にウイルス内で起こっているかどうかをin vitroの系で確認する。スイスETH Jeffrey Bode教授らと人工的に合成したユビキチンを用いた共同研究を行う。蛍光標識した人工合成ユビキチンをウイルス抽出液と反応させ、そのユビキチン鎖の挙動を調べる。 インフルエンザの感染抑制をするHDAC6に対するNanobodyにGFPなどの蛍光標識を結合させ、細胞内での挙動を観察するためのツールを開発する。また、これらのNanobodyを用いて、HDAC6タンパク質の全体構造をCryo-EMで観察するため、タンパク質精製を行い、条件検討をする。これらのNanobodyのHDAC6への結合を抑える低分子化合物を探索することで、宿主を対象とした新たな抗ウイルス薬につながることが期待される。さらに、このNanobodyがZnFのどこに結合しているのか、結晶構造解析も試みる。 昨年度、インフルエンザウイルスのゲノムが細胞質に放出されたのちに、TNPO1タンパク質がウイルスのM1タンパク質と結合することによって、8本のインフルエンザウイルスゲノムが個々のウイルスゲノム(分節segment)に分かれ(debundling)、核内に侵入する分子メカニズムを明らかにした。TNPO1およびM1タンパク質の複合体の構造解析を通じて、より詳細なウイルスゲノムの核内侵入メカニズムを明らかにする。
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Research Products
(9 results)