2020 Fiscal Year Research-status Report
プラトンによる魂の原的把握についての問答法的・国際的研究
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18K00004
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
荻原 理 東北大学, 文学研究科, 教授 (00344630)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 古代哲学 / 魂 |
Outline of Annual Research Achievements |
9月刊の北海道大学哲学会『哲学』第54号に、千葉惠『信の哲学――使徒パウロはどこまで共訳可能か』の書評を寄稿。パウロとアリストテレスの心魂論の、千葉による対比、アリストテレスにおける「人柄としての徳」とフロネーシスの関係等について見解を発表した。 10月31日、哲学会第59回研究発表大会(オンライン)中のワークショップ「マクダウェルにおける合理性の概念をめぐって」にて提題「実践の合理性は実践に内在的にしか完全には理解できない、というマクダウェルの主張」を発表。ひとが合理的実践の合理性を見て取ることをめぐる近現代的偏見のマクダウェルによる批判を明確化・検討した。 11月27-29日オンライン開催の The 3rd Asia Regional Meeting of the International Plato Society: Image and Imagination in Plato のオーガナイザーの1人を務めた(主催は Seoul National University の Sung-Hoon Kang)。 12月27日、酒井健太朗著『アリストテレスの知識論――『分析論後書』の統一的解釈の試み』合評会を主催・司会した。 3月22日発行の日本感情心理学会『エモーション・スタディーズ』6巻「特集 共同と感情の哲学」に「共同と感情――西洋哲学のある傾向に逆らって」を寄稿。〈個人と共同〉の対では個人に、〈行為と感情〉の対では行為に、〈理性と感情〉の対では理性に優位を認めがちな西洋哲学の傾向に逆らい、共同行為は個々の参加者の諸行為の和に還元されないこと、感情の共有について比喩でなく語りうること、行為についてどう感じるかも倫理的評価の対象となること、感情的態勢の道徳的完成が行為選択の合理性の達成に貢献すること、感情はその内容に関して合理性の評価を受けることを論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度、本研究課題に関連する1本の査読論文と1本の書評を発表できた。 コロナ感染防止のため、対面式の研究集会の開催を見送ったが、オンラインで、本研究課題に関連する国際学会のオーガナイザーの1人となり、ワークショップで提題発表を行ない、書評会を主催・企画できた。 プラトンによる魂の原的把握、ならびにこれと関連する諸問題について、ひとつにはプラトンのテクストの読解を通じて、また、アリストテレス、マクダウェル、パウロとの対比を通じて、また、感情をめぐる哲学的考察を通じて、実質的な見通しを形成しかつ固めつつある。 プラトン『ソフィスト』篇の、欺き・像をめぐる議論や〈あらぬもの〉をめぐる議論は、プラトンによる魂の原的把握の理解にとって重要であることに気付き、その対話篇の集中的な読解に取りかかっている。そこで、その対話篇を研究者の演習で取り上げるだけでなく、東京大学大学院文学研究科哲学の、納富信留・田坂さつきの演習(オンライン)に参加し、テクスト読みの担当発表を3度行ない、論点提示会でも短い発表を行なったが、それを通じて、〈像制作術〉の2種類(〈似像制作術〉と〈幻像制作術〉)をどう理解するかについての解釈を形成しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年度であり、研究の最終的総括をめざして精力的に研究を推進する。 そのさい、プラトン後期のとくに『ピレボス』、『ソフィステス』、『政治家』、『テアイテトス』、『法律』に注目したい。中期哲学を踏まえたうえでの、後期に固有の展開は、プラトンの魂の原的把握の研究にとってことに重要と思われるからだ。 発表の機会として、ひとつには、International Plato Society の3年に1度の大会、Symposium Platonicum (XIII)での発表(2022年7月18-22日)を目指して、要旨を提出する予定(2021年9月末締切、審査)。研究内容を発展させるために、優れた研究者からコメントを仰ぐ予定。 もうひとつには、西日本古代哲学会にてプラトン『ピレボス』についての研究発表を行なう予定。 依然としてコロナ感染対策のため対面式の催しを控えなければならない状態にあり、2021年度中に終息するかどうか不明だが、可能であれば対面式の、不可能であればオンラインによる国際シンポジウムまたは講演会の開催を予定している。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、予定していた対面式の研究集会を開催できなくなった。 次年度、コロナが終息しているかどうか不明だが、対面式の研究集会を計画している。いずれにせよ、オンラインでの研究集会を開催し、優れた研究者に講演を依頼し謝金を支出する予定である。また、研究資料を充実させ、研究代表者の進行中の研究について優れた研究者のコメントを仰ぎ、専門的知識の提供に対して謝金を支出することを考えている。
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Research Products
(3 results)