2021 Fiscal Year Research-status Report
プラトンによる魂の原的把握についての問答法的・国際的研究
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18K00004
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
荻原 理 東北大学, 文学研究科, 教授 (00344630)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | プラトン / 魂 |
Outline of Annual Research Achievements |
第1に、(2022年7月18-22日米国ジョージア大学にて開催予定の国際プラトン学会 [International Plato Society] 第13回大会 [Symposium Platonicum XIII] で発表するには、発表要旨を大会事務局に提出し、審査を受け採択されなければらないのだが)研究代表者は2021年10月23日に、'The psychology of the sophist: Plato’s SOPHIST 267c2-268a9' と題する発表要旨を提出し、2022年2月23日に採択の通知を受け、無事、大会発表の資格を得た。 第2に研究代表者は、2022年3月24日午前8-11時(米国太平洋時間で23日午後4-7時、米国東部時間で23日午後7-10時)、'Symposium on Plato's Psychology'(「プラトンの魂論をめぐるシンポジウム」)と題する国際シンポジウムをZoomにて開催した。まず研究代表者自身が 'The “suspicion and fear” of the sophist: Plato’s SOPHIST 267e8-268a10' と題する、ソフィステス最終定義におけるソフィステスの魂のありようの特徴づけについての提題を, 次いで Giovanni Ferrari教授(米国カリフォルニア大学バークレイ校)が 'The Moral Psychology of the “Greatest Accusation” against poetry (Plato, REPUBLIC 605c5)' と題する、悲劇を観ることが魂をどう堕落させるのかに関する提題を, 最後に Rachana Kamtekar教授(米国コーネル大学)が 'The Psychology of Philosophers’ and Nonphilosophers’ Virtue in Plato’s PHAEDO' と題する、知恵が諸情念の交換の貨幣とされる意味に関する提題を行なった。各提題は発表約30分、質疑約30分。Ferrari教授、Kamtekar教授という当代随一の研究者2名に登壇頂き、20数名の参加するシンポジウムでは、質疑も活発に行なわれた。研究代表者の発表も様々の有益なコメントを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、本年度は本研究課題の最終年度となるはずだった。特に、対面式の国際シンポジウムを東北大学にて開催し、これが研究の総括の役割を果たす予定だった。ところが、前年度からのコロナ禍の影響で、対面式の研究意見交換が、総括的国際シンポジウムの開催も含め、実施不可能となった。その意味で、前年度以来、研究に遅れが出ていた。来年度も研究を継続することにしたのはそのためである。 しかしながら本年度は、2つのまとまった成果をあげることができた。ひとつには、発表要旨が審査を通過したことにより、来年度の国際プラトン学会大会(7月18-22日、米国ジョージア大学)で研究発表を行なう資格を得た。 もうひとつ、より重要なことに、2022年3月24日、オンラインではあるが、プラトンの魂論についての国際シンポジウムを開催した。また、そこで提題者のひとりとして研究発表を行なった。『ソフィステス』篇の最終定義におけるソフィステスの「疑念と恐れ」に着目しての分析には独創性があると自負するものの、発展の余地を残す議論ではあったが、質疑応答の場で、今後の研究推進のための実に有益なフィードバックを得た。同シンポジウムでの他の提題者は、現在最も重要なプラトン研究者のうちの2名、カリフォルニア大学バークレイ校のジョヴァンニ・フェラーリ教授と、コーネル大学のラチャナ・カムテカル教授であり、両名の刺激的で洞察に富む発表は研究代表者にとってもオーディエンスにとっても有意義であった。質疑応答も活発になされ、シンポジウムは大成功だったと自負する。 以上の理由により、前年度以来の、コロナ禍ゆえの遅れを本年度、挽回することができ、本研究課題は全体として、おおむね順調に進展しているものと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年7月18-22日、米国ジョージア大学にて開催予定の国際プラトン学会大会での発表本番までに、発表原稿(要旨は提出済)――『ソフィステス』の最終定義におけるソフィステスの「疑念と恐れ」を考察するもの――を改訂する。この発表は、2022年3月24日に開催されたオンライン・シンポジウムでの提題に基づくものとなろう(それで問題ないことは確認済)。改訂にあたっては、オンライン・シンポジウムで得た有益なフィードバックを踏まえる。 その後、国際プラトン学会大会での諸発表からの選抜論文集(Akademina Verlag 刊)に投稿する。そのさい、同大会での発表への質疑で得られるであろうフィードバックを参考にすることになろう。論文集収録のための選抜からもれてしまった場合には、改訂のうえ、別の国際ジャーナル(例えば、国際プラトン学会のオンライン・ジャーナル PLATO など)に投稿する。 2018年に口頭発表した 'Education-related compulsion in Plato's REPUBLIC' を改訂し、国際ジャーナル(等)に投稿する。 いずれの論文についても、当該テーマへの関心を共有する諸研究者と盛んに討議し、研究文献を調査・検討することは言うまでもない。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で研究に遅れが出た(当初の計画では本年度が最終年度の予定だったが、研究期間を1年延長することにした)。図書購入、英語校閲費、旅費、資料整理のための謝金、等に用いる。
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