2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K00005
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
原 塑 東北大学, 文学研究科, 准教授 (70463891)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 研究公正 / 研究倫理 / 科学コミュニケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
公正な研究を推進することに適した組織を科学的知識の公共性の観点から検討することがこの研究のテーマである。科学的知識が公共的に利用可能となるためには、知識の利用者である一般の人々の教育や、科学情報の流通過程も視野に入れる必要があるため、必要な限りにおいて、人材育成や科学コミュニケーションの研究を行う必要がある。平成30年度は、今後、取り掛かる予定の研究公正に関する書籍の執筆のための資料収集・読解、論点整理を行なった。研究内容上の重要な成果として、待鳥聡史・宇野重視編著『社会の中のコモンズ』(白水社、2019年)などで展開されているコモンズ論に行き着いたことがある。体系的な科学的知識を、原則的にだれにでも利用可能なコモンズであるとみなすことができれば、公正な研究組織とは知識コモンズの生産管理を行う人々によるガバナンスの行き届いた組織のことであり、知識コモンズへのアクセスを妨害する様々な要因の排除が、科学コミュニケーションの目標の一つとして位置づけられることになる。今後、研究公正と人材育成、科学コミュニケーションの妥当なあり方をコモンズ論の観点から統一的に説明することを目指す。 平成30年度の研究成果としては、科学コミュニケーションに関する論文、一報を執筆し、査読付き学術誌に投稿したことがある(現在、査読中)。その他、東北哲学会で研究公正に関する研究発表、科学技術社会論学会において科学コミュニケーションを主題とする研究発表を行った。また、昨年12月には、公正研究推進協会(APRIN)主催のセミナーの講師をつとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究公正と科学コミュニケーションを独自の観点から統一的に説明する観点を設定することが平成30年度における最大の課題であったが、この課題はコモンズ論について検討することで果たせる可能性が高いことがわかった。具体的成果として、科学コミュニケーションに関する論文、一報を執筆し、査読付き学術誌に投稿することができた。また、東北哲学会で研究公正に関する研究発表、科学技術社会論学会において科学コミュニケーションを主題とする研究発表を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
体系的な科学的知識を知識コモンズとみなし、19世紀から現代にいたるまでの知識コモンズの形成過程を追う。その上で、知識コモンズの維持管理を適切に行うための規範として、公正な研究のルールを特徴づける。さらに、知識コモンズへの人々のアクセスの妥当なあり方を検討する。
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Causes of Carryover |
研究を推進するために必要となる資料において、すでに入手している書籍を利用することができることがしばしばあり、物品費の支出額が予想よりも少なかったため。
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Research Products
(3 results)