2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K00005
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
原 塑 東北大学, 文学研究科, 准教授 (70463891)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 研究公正 / 科学コミュニケーション / 公共性 / 欠如モデル / 専門家助言 / 新型コロナウイルス感染症 |
Outline of Annual Research Achievements |
公正な研究を推進することに適した組織を科学的知識の公共性の観点から検討することがこの研究のテーマである。科学的知識が公共的に利用可能となるためには、知識の利用者である一般の人々の教育や、科学情報の流通過程も視野に入れる必要があるため、科学コミュニケーションの研究を行う必要がある。 令和2年度開始早々、科学コミュニケーションの基礎概念を検討した査読論文1報と、私が企画・編集を担当した特集(市民科学、臨床研究への市民参画、当事者研究をあつかったもの)を含む学術雑誌『科学技術社会論研究』第18号が出版された。 令和2年冒頭から世界中に広がった新型コロナウイルスが、学術研究だけではなく、日本社会全般に大きな影響をあたえる姿を目の当たりにして、研究公正や科学コミュニケーションに関連する限りにおいて、日本におけるコロナ禍について調査し始めた。 研究公正との関連において特に重要なのが、助言者としての専門家が果たす役割である。コロナ禍の初期段階(令和2年2月から7月)では、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議のメンバーが、「前のめり」と批判されながらも、市民の前に直接現れ、新型コロナウイルス感染症の広がりや対策を迅速に説明していた。この段階での市民向け科学コミュニケーションは、情報の公開性が確保されている点で、高く評価できる。しかし、改組後には、専門家助言組織は行政の下請けの地位に格下げされ、そのため専門家の発言は透明性や科学的妥当性を欠くものになり、その点で政府が実施したい政策に適合的な方向に重みづけをされているのではないかという疑念をもたれるようになった。このような専門家助言のあり方の変化の動態を捉えることは、研究公正の観点からも極めて重要であり、現在、検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、大学などの研究機関内部において確保されるべき研究公正を主な研究テーマとする予定であった。しかし、新型コロナウイルス感染症が社会に拡大し、それへの対処の最前線に感染症専門家が登場するようになると、専門家助言組織において確保されるべき研究公正のあり方を検討する学術的重要性が増してきた。このことへの対応のため、新たな調査が必要になり、その分、研究が遅れ気味になっている。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍で認識されつつある専門家助言組織が満たすべき、研究公正上の要件を明確化し、それを論文、ないし書籍としてまとめる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の社会への拡大により、研究会の企画運営や出張の機会が減少し、その分、予算が未消化に終わった。令和3年度には、研究資料の購入を効率よく進め、研究を進捗させる予定である。
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