2018 Fiscal Year Research-status Report
The inquiry about phantasy and image consciousness in the phenomenological thoughts --- from Husserl's thought
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18K00007
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
小熊 正久 山形大学, 人文社会科学部, 名誉教授 (30133911)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 想像 / 画像 / フッサール / メルロ=ポンティ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究実績は、第一に、論文「フッサールの想像と画像意識の現象学的分析」を発表し、この主題に関するフッサールの分析の全体をまとめたことがあげられる。内容は以下の通りである。1)準備として、対象に向かう志向性という特徴をもつ志向作用全般とその分析の独自性を概観した。2)1904/05年の講義「想像と像意識」における「想像作用」と「画像意識」についての考えを検討し、「画像」がほかのものの「像」すなわち「媒体」として捉えられることはどういうことかという、「像」一般についてのフッサールの基本的な立場を説明した。そこでは、「像物体」・「像客体」・「像主題」の連関が問題となる。3)『イデーン第一巻』に至るまでのそれらの考察をまとめたが、そのさい、「想像」と「画像意識」のいずれにも関わるものとして「中立性」の概念が重要事項となる。4)「覚知的想像」という態度(知覚的内容の表象であるが、現実存在の措定を含まないという点で中立的である)に注目し、「風景の美的観照」、「演劇の鑑賞」、画像意識における「像客体」の在り方に含まれる契機として、考察した。この態度は、絵画のみならず、芸術鑑賞全般に関わる重要な態度と考えることができる。 第二に、「想像と画像についての研究会」(12/22、東北大学)を開催し、口頭発表「フッサールにおける想起とその時間的構成――大森時間論との対比を出発点として」行った。想像や画像意識とも関連する「フッサールの時間論」の基本構造を明らかにし、また大森荘蔵氏の時間論との対比を通して、その独自性を明確化した。 第三に、2019年度出版予定の『メルロ=ポンティの表現論―言語論と絵画論』をほぼ完成した。それは、言語表現と対比しながら絵画の表現を論じたメルロ=ポンティの著作によりながら、言語表現とその意味とは何か、知覚と絵画における表現と意味の特質を考察するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題は、「現象学における想像と画像意識の追究―フッサールを起点として―」であるが、2018年度は、論文「フッサールの想像と画像意識の現象学的分析」を作成し、この主題に関するフッサールの分析の全体をまとめることができた。これを通して、「像」の在り方や「想像」についてのフッサールの基本的な考えを把握し、その後の、サルトル、メルロ=ポンティをはじめとする現象学的な画像論や想像論の起点を確認することができた。それは、「中立性」あるいは「覚知的想像」という概念に集約されるであろう。 また、それと関連して、フッサールの「想像論」ととくに関連の深い「フッサールの時間論」の考察をおこなった。 その後、フッサール以外の現象学者の重要な見解としてメルロ=ポンティの絵画論について考察をすすめており、2019年度半ばにはその成果を公表する予定である。その後は、メルロ=ポンティの絵画論とも関連の深いゴットフリート・ベームの絵画論やランベルト・ヴィーズンクの画像論を考察する予定である。 以上により、研究はおおむね良好に進捗していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、前年度にまとめたフッサールの想像と画像意識についての見解をふまえて、まず第一に、メルロ=ポンティの絵画論を完成させ、公表するのが第一の課題である。メルロ=ポンティは、ソシュールの言語論やフッサールの身体論、経験や知覚の意味のついての考察、間主観性論、画像意識論などの影響受けたものである。メルロ=ポンティは、ソシュールの言語論・記号論の洞察を生かしながらも、フッサールの影響の下に、経験や知覚における意味を認め、絵画論を展開した。他方、メルロ=ポンティは、フッサールとは異なり、言語表現の創造性を通時的観点から見た言語の推移と関連させて述べた。絵画表現についても、知覚における意味を踏まえて、言語における要素の関連性、画家どうしの描画方法の描画方法(スタイル)の連関性などに注目しつつ論じた。こうした点をまとめて、メルロ=ポンティの絵画論の特質を明確化する。また、メルロ=ポンティの絵画論を参考にしているベームの画像論、芸術論やヴィースンクの現象学的像理論についての考察を参照しつつ、課題について充実した考察を行う予定である。
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Causes of Carryover |
フッサール著作集や画像関係の書物の入荷が遅れたため、次年度使用額が生じた。次年度には確実に使用可能である。
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