2021 Fiscal Year Annual Research Report
A Philosophical investigation concerning the attribution of responsibility on the basis of the analysis of the concept of causation: In the light of problems on causation by absence
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18K00008
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Research Institution | Musashino University |
Principal Investigator |
一ノ瀬 正樹 武蔵野大学, 人間科学部, 教授 (20232407)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 過失 / 不作為 / 不在因果 / 信念の倫理 / 非難相当性 / コロナ感染症 / 風評 / 責任帰属 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、事実の認識に際して、証拠や根拠を注意深く確認することを怠るという意味での「過失」や「不作為」を原因として、有害な結果が帰結してしまうという「不在因果」が問題となる事態に再度焦点を当てて、そうした事態に関する倫理的評価の問題をさらに検討した。具体的には、W.K.クリフォードの「信念の倫理」の検討・検証を通じて、自然災害や感染症などにおいて発生しがちな「風評」に関する倫理的評価の問題を論じた。その成果として、「原発問題、信念の倫理、そして幸福」(『エネルギーレビュー』vol.492、2021年12月号、pp.38-41)、「「信念の倫理」と非難相当性の問題 -「信念の倫理」研究序説(2)」(『武蔵野大学人間科学研究所年報』第11号、武蔵野大学人間科学研究所、2022年3月、pp.21-38)の2論文を発表した。これはまさしく、「不在因果」と「責任帰属」の問題の研究である。 さらに、そうした研究文脈の延長線上で、Covid-19の問題にも視線を広げ、次の共編著を研究成果として発表した。『病災害の中のしあわせ-自然災害とコロナ問題を踏み分けて-』(西本照真との共編著、武蔵野大学出版会、2021年12月、270頁(担当部分・序章「「しあわせ」の二極性から「個人」概念の深みへ-」pp.5-21、第5章「自然災害と感染症に立ち向かう倫理-大震災とコロナ感染症の中で「しあわせ」は成り立つか-」pp.97-140)。ここでも、まずは事実確認における検証の不在が重大な害を因果的に惹起する可能性について論じた。 それ以外に、動物倫理についても、人間と動物の関係性について、その固有の複雑性を見逃すこと、そういう意味での「不在」が、大きな問題をもたらす可能性について論じた。
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