2018 Fiscal Year Research-status Report
生命認識における概念の役割と規範--ヘーゲル自然哲学への科学史からのアプローチ
Project/Area Number |
18K00009
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
大河内 泰樹 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (80513374)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ヘーゲル / 生命 / 規範 / 正常性 / 観念論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の中心的なコンセプトについて「生命における概念と規範――観念論の範型としての生命認識――」(大河内2018a)において論じた。そこでは、1.ヘーゲルの生命論おける概念の本質的役割、2.分析哲学におけるヘーゲルの規範的読解とカンギレムの生命概念の類似点と差異、を明らかにすると共に、3.「義務論的規範」と「正常性の規範」の区別を導入することによって、本研究の基礎となる視点を獲得することが出来た。 2018年度は、(1)ヘーゲル『エンチュクロペディ』および『自然哲学講義』における「有機体の物理学」のテキストの検討をおこなった。その成果の一部は論文「多元的存在論の体系――ノン・スタンダード存在論としてのヘーゲル『エンチュクロペディ』」(大河内 2018b)。として発表した。そこでは、分析形而上学における存在論およびマルクス・ガブリエルにおける多元的存在論の構想を踏まえながら、どちらとも異なる「ノン・スタンダード存在論」を構想するものとしてヘーゲルの「エンチュクロペディ」体系を特徴付けた。これにより、本研究における生命論をヘーゲルの体系構想の中に位置づけることが出来、またヘーゲルの有機体論を多元的存在論の中に位置づけられたひとつの「領域存在論」として理解する道を開いた。(2) ヘーゲルの同時代の生物学に関する文献を収集し、ほぼオンラインで入手可能であることがわかった。一部についてはすでに読解を進めている。(3)イェナ大学フィーヴェーク教授と「ヘーゲルにおける生命」に関する国際会議の準備を進めており、2020年秋の開催を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度の課題は、(1)ヘーゲル『エンチュクロペディ』および『自然哲学講義』における「有機体の物理学」のテキストの検討、(2) ヘーゲル同時代の生物学に関する文献の収集、(3) 国際会議開催準備であったが、上記の要理いずれについても順調な進捗を見せている。 上記の2本の論文を発表することが出来たほか、2018年12月には、復旦大学(中国・上海)で開催された国際会議でヘーゲルの行為論について発表することが出来たほか、2019年4月にウィーン大学で開催される国際会議「規範の社会制度」にエントリーし査読を経て採用され、報告準備を進めた。
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Strategy for Future Research Activity |
以上のように順調に進捗していることから、2019年度以降も当初の計画に則り研究を進める。2019年度には、2018年度に収集した、当時の自然科学に関する文献をすすめる。また、ヘーゲル自然哲学の有機体論についての二次文献の検討も進める予定である。 以上を踏まえて、『精神現象学』および『大論理学』における生命概念、類概念を再検討し、トンプソンの生命形式概念と比較しながらその妥当性を検討する。 また、2019年秋までに、2020年秋に開催を予定している研究会議の概要を固める。本研究の研究成果を発表すべく、2019年度・2020年度をつうじて国際学会へのエントリーを試みる。
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Causes of Carryover |
国際研究会議において招聘元より旅費が支給されたため。2019年度開催予定の国際会議の研究者招聘旅費に利用予定。
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