2018 Fiscal Year Research-status Report
Ethical Consideration on modification of nature. An approach from kantian viewpoint
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18K00018
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Research Institution | Shimonoseki City University |
Principal Investigator |
桐原 隆弘 下関市立大学, 経済学部, 教授 (70573450)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 歴史哲学 / 経済秩序論 / 自然の回復 / 物質代謝論 / 所有と人間存在の自由 / 中庸 / 財産の徳 / 適正な経済 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は研究論文2本(公刊1本;2回に分けて掲載、未公刊1本;共著に掲載予定)を執筆し、学会発表を1回行った。このうち論文「F.G.ユンガーの歴史哲学―自然観と経済秩序論の観点から、マルクスとの比較を通じて(1)(2)」では、ユンガーによる技術文明への存在論的探究をマルクスの資本主義経済批判と比較した。自然観(相違点;人間の経済活動のための不可侵の存在論的基盤or類としての人間の自己実現の手段、共通点;喪われた自然の回復)、および経済思想(技術的合理性に対立し、長期的な採算性として理解されるユンガーの経済性概念と、マルクスの物質代謝論との類似性、所有と人間存在の自由との関係をめぐる共通の思想)の比較に基づいて、堕落史観or進歩史観という両者の相違にもかかわらず自然・人間本性の疎外の克服とそれの実現・回復が共通の歴史観として見出されると指摘した。また、ユンガーの「不可侵の基体」としての自然観と類似の思想が、現代の生殖医療技術論争においては、カントの人格/物件論およびアーレントの出生性概念に基づいて出生時の生物学的条件の偶然性と不可処分性を主張するハーバーマスに見出されること、およびマルクスの「類の自己実現手段」としての自然観がミヒャエル・クヴァンテに受け継がれていることを指摘した。 論文「財産の徳―アリストテレスとカントの徳論の社会経済的背景と「中庸」説の再構成」では、財産の徳をめぐるアリストテレス説とカントによるアリストテレス「中庸」説批判に着目して、これらが伝統的経済秩序から近代的経済秩序への転換を背景としていることを確認し、そのうえで、アンゼルム・ミュラーおよびニコライ・ハルトマンの所説を参照して、財産の徳を支持・促進的徳である「寛大さ」と矯正的徳である「倹約」とを表裏とする「適正な経済」として独自に再構成する構想を提起した。 学会発表は先述のユンガー・マルクス比較論の草稿である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究論文の執筆、学会発表、ともに精力的に行い、着実に成果を残した。
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Strategy for Future Research Activity |
自然改変の倫理的諸問題については、2年目の研究期間においてはドイツのエコロジー経済学(とくにハンス・イムラー)を参照して研究を深めたい。研究の全体方向としては、これまで執筆してきた論文を総括しつつ、「カントと社会理論」というテーマのもと、自然観、経済秩序論、歴史観を包含する社会哲学的研究として著作にまとめたい。そのために、研究生活を始めた当初着手していた批判的社会理論研究を本格的に再開し、社会理論の文脈でのカント哲学の意義について体系的に考察する。
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Research Products
(3 results)