2020 Fiscal Year Annual Research Report
Ethical Consideration on modification of nature. An approach from kantian viewpoint
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18K00018
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Research Institution | Shimonoseki City University |
Principal Investigator |
桐原 隆弘 下関市立大学, 経済学部, 教授 (70573450)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 人間的自然 / 本能と理性 / 言語起源論 / 歴史哲学 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度では、おもにヨハン・ゴットフリート・ヘルダーとカントとの比較を通じて「人間的自然」の諸条件を解明した。 論文「人間的自然と歴史へのまなざし―ヘルダー言語起源論とカント歴史哲学」では、ヘルダーの『言語起源論』に注目し、人間のもつ感覚(五感)の構造に根差した言語起源説およびそれを土台とした歴史の「自然法則」論を検討した。「自然法則」(群居性・類的発展・民族的個性・人類の単一起源)の提起を通じて、ヘルダーは、作術本能の欠落を補いその広範囲(自己に関連する世界全体)におよぶ活動能力を飛躍的に高めるのが理性使用・言語使用であると述べ、理性を身体性を備えた身体構造の一環として捉えている。カントがのちに、理性能力を「自然素質」として歴史発展のなかで捉え直そうとしたのは、ヘルダーの論考に影響を受けた面があるといえそうだ。 「ヘルダーの形態学的-経験論的人間観―『人類史の哲学への諸構想』から『純粋理性批判の批判』へ」では、ヘルダーのライフワーク『人類史の哲学への諸構想』およびそれへのカントによる批判的書評、さらにそれへのリアクションともいえるヘルダーによるカント純粋理性批判への批判を取り上げた。本稿ではヘルダーの哲学的人間観をゲーテの自然観と英国経験論を統合する志向を示すものと捉えて「形態学的-経験論的人間観」と称した。その要点として、本能と理性のトレードオフ関係を、発生論的・連続的ではなく種別上の相違を強調しつつ、なおかつ人間の生の経験的事実に根ざしつつ解明しようとしたこと、および、本能が全般的に備わりつつも動物ほど集中的・強靭でないところを、理性と言語使用、さらには共同体における協力関係が補うことで、人間が人間としての歴史の歩みを進めていくという見解としてまとめた。
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Research Products
(2 results)