2020 Fiscal Year Annual Research Report
A study on seven capital vices in medieval philosophy
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18K00023
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
松根 伸治 南山大学, 人文学部, 教授 (90432781)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 七つの罪源 / トマス・アクィナス / 『悪について』 / フォンテーヌのゴドフロワ / 枢要徳 / 情念論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、七つの罪源の枠組みに着目して、中世の神学・哲学著作における罪と悪徳の理論を哲学史的に解明することである。最終年度2020年度の研究実績は以下の通りであった。(1)中世哲学会シンポジウムにおいて「12世紀の枢要徳論」の提題を行ない、異教徒の徳という視点から、アベラールとソールズベリーのヨハネスによる徳の説明について論じた。(2)トマス・アクィナス『悪について』第11問「怒りについて」の翻訳作業を進め、情念としての怒り、悪徳としての怒りの特徴づけについて考察した。(3)「トマス情念論による伝統の理論化」を執筆・公刊した(『世界哲学史4』所収、第5章)。『神学大全』第2部の1における情念論の概要について非専門家向けに説明を試みたもの。情念のもつ受動と動きの二側面、気概的能力と欲望的能力の区別、トマスが活用している多様な思想源泉について解説したうえで、各々の情念がどのように理解され位置づけられているかを整理した。(4)「フォンテーヌのゴドフロワの正義論:一般的徳としての正義」を執筆・公刊した(『西洋中世の正義論』所収、第8章)。邦語の研究成果がほとんどないゴドフロワの正義論をとりあげ、『任意討論集』第14巻のテキストにもとづき、正義の多義性、正義の基体、正義と愛について考察した。以上のように、罪源や悪徳に深く関連する枢要徳の理論と情念論についても幅広く研究を進めた。とくに、トマスの前後の時代における倫理思想の特徴を詳しく考察することができた点は有益であった。
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