2018 Fiscal Year Research-status Report
『オプス・ポストゥムム』の研究-フィヒテ、シェリング、『エーネジデムス』との関係
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18K00025
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Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
内田 浩明 大阪工業大学, 工学部, 准教授 (90440932)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | カント / オプス・ポストゥムム / フィヒテ / 知識学への第二序論 |
Outline of Annual Research Achievements |
当年度は、カントの『オプス・ポストゥムム』とフィヒテの初期知識学、とりわけ「知識学への第二序論」との関係を考察した。 業績としては、① 日本フィヒテ協会の学会誌『フィヒテ研究』第26号における「フィヒテの『知識学への第二序論』とカント」、② およびカント研究会における口頭発表「イェーナ後期『知識学への第二序論』におけるフィヒテのカント理解」、③ さらには日本カント協会の学会誌におけるVeit Justus Rollmann著の Apperzeption und dynamisches Naturgesetz in Kants Opus postumum:Ein Kommentar zu "Übergang 1-14"の書評がある。 上記①においては『オプス・ポストゥムム』に若干言及したものの、カントの『オプス・ポストゥムム』とフィヒテの「第二序論」との関係を正面から論じた論考ではないけれども、むしろ上記②の助走と言える研究である。その②においては、カントの『オプス・ポストゥムム』とフィヒテの「第二序論」を真正面から論じ、カントの自己定立論を分析するかぎり、フィヒテからの積極的的な影響はなかったことを結論として論じたものである。また、③は『オプス・ポストゥムム』に特有の「エーテル証明」(エーテル演繹とも呼ばれる)を主題にした研究書であり、その書評を書くことによって、シェリングの初期自然哲学との関係をも見据えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上に書いた通り、『オプス・ポストゥムム』の自然哲学部門を論じるためには、フィヒテとの関係に拘泥することはできない。『オプス・ポストゥムム』の核心部分とも言える「エーテル証明」に関する理解を深めることにより、自然哲学を重要視したシェリング哲学との関係もより鮮明になる。ロルマンの著作に関する書評を書くことにより、シェリングの自然哲学との関係についての論点をより明確に絞りこめたという意味において、研究課題はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針としては、シェリングの自然哲学とカントの『オプス・ポストゥムム』との関係を、両者の異同を文献的に検証していくことを第一の目標とする。 とりわけ『オプス・ポストゥムム』全体においてフィヒテへの言及が皆無であるのに対して、シェリングへの言及はあることから、その理由を解明していくことが第一の目標として挙げられる。具体的には、『オプス・ポストゥムム』におけるシェリングへの言及箇所を手がかりに、カントが読んだと思量できる当時の学術雑誌をより深く研究し、シェリングとの関係を明確にする。
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Causes of Carryover |
当年度は、シェリング全集を幸運にも古書で入手するすることができたのみならず、カント・フィヒテ・シェリングをはじめとする二次文献等も予想以上に安価で購入することができたため、支出額を抑えることができ次年度使用額が生じた。 その繰越金も活用しながら当年度も科学研究費の多くをカント・フィヒテ・シェリングを中心に哲学関連の文献購入に充てる。また、旅費に関してはシェリング協会での口頭発表に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)